環境を整えると、
子どもは
こんなにも興味を持ち、
集中してくれるんだなぁ
― Willbe 塾長
―実感より
子どもを指導していると、時々ふと胸に刺さる瞬間があります。
「あぁ、この子、やる気がないわけじゃなかったんだ」
「できないんじゃなくて、“できる環境にいなかっただけ” なんだ」
こういう場面に何度も出会ってきました。
子どもって、本当に面白い生き物です。
能力以前に、見る世界を少し整えるだけで、別人のように集中し出す。
そしてその集中は、決して「根性」や「努力」ではありません。
もっと自然で、もっと健全で、もっと“その子らしい” 集中の入り方なんです。
今日は、Willbeでの日々の指導で感じていることをもとに、
「環境を整えると、子どもはこんなにも集中する」
というテーマでお話しします。
Willbeもまだまだ不完全な環境です。
子どもが集中できない理由は「性格」ではなく「環境」だと思っています
人の心よりモノを変える方が簡単
「うちの子、集中力が続かなくて…」
そんな相談は本当に多いです。
でも実際に話を聞いてみると、
子ども自身に問題があるケースは、ほとんどありません。
集中できない最大の理由は、 “外的刺激の多さ” です。
- 視界にいろんな物がある
- 音が多い
- 気が散るものが同じ空間にある
- 始めるまでの手間が多い
- いつ終わるか分からない不安がある
大人でも同じですよね。
スマホを横に置いた状態で本を開いても、なかなか読み進みません。
でも子どもはなおさらです。
大人より注意資源(注意力の総量)が少ないのですから、
誘惑をはねのける力はさらに弱い。
つまり、子どもが集中できないとき、
子どもは悪くない。
整っていない“環境のほう”が悪い。
と、考えた方が良いのです。
他人(学校や先生やお子様自信)のせいにするより、自分(私/親)のせいにした方が、どうすれば良いか分かります。
悩むのではなく、学んで勉強して考えて行動する。
■ Willbeで「環境を整えただけ」で起きた変化
では、実際にどんな変化が起きるのか。
以下は、実際の教室でよく見られる光景です。
◎机の上のものを「1つだけ」にした瞬間、急に黙り込んだAくん

(出来れば本に囲まれて勉強したい女の子の指定席?)
ワークを開いているそばから、
鉛筆を回したり、
消しゴムを触ったり、
なんとなく落ち着きのなかったAくん。
そこで私は、机の上のものをすべて片付け、
「今やるのはこれだけ」とワークを1冊置きました。
するとどうでしょう。
急に視線がワークに向き、黙々と書き始めたのです。
やるべきことが明確になると、人は迷いません。
特に子どもは、その恩恵をダイレクトに受けます。
散らかってる方が集中できる子もいれば、
本に囲まれている方が集中できる子もいます。
難しいですね笑
◆「始める手間」をなくすと、動き出しが劇的に早くなる
子どもは「スタートのハードル」が少し高いだけでも動けません。
- ドリルを探す
- ペンを準備する
- どこから始めるか考える
これらがあると、一瞬でやる気が冷めてしまう。
そこで 「開いた問題集」と「鉛筆だけ」を置いた状態 にしておくと、
子どもはスッと座って、何も言わなくても勝手に始めます。
「始めるまでの手間」をゼロにすると、
こんなにもスムーズにいくのかと、毎回驚かされます。
◎計算バトル例のヤツが生まれた瞬間
Bくんは「やりたくないわけではないけれど、自分ひとりで始めるのが苦手」なタイプでした。
ワークを開いたまま、鉛筆を持ったまま、なんとなく手が動かない。
気分が乗らないと、そのままぼんやりしてしまう。
そこで、私はあえて“教える”のではなく、
「一緒に楽しむ」という環境を用意してみました。
◆私が隣で「お、これは面白そう!」とつぶやいた瞬間…
Bくんの横に座り、
開いたワークを見ながら軽く声を出しました。
「この問題、ちょっとゲームみたいで面白いなぁ。
先生もやってみていい?」
Bくんは、少しだけ驚いた顔をしました。
そして小さく笑って、こう言いました。
「いいよ。でも、先生より僕のほうが早いで」
この一言で、空気が一気に変わりました。
◆軽い“勝負ごっこ”が集中の入り口になる
私が横で問題を解いてみせると、
Bくんは負けじと鉛筆を走らせます。
- 「あ、これいけるわ」
- 「ここ、僕のほうが先にできた!」
- 「じゃあ次はこのページいってみようや」
気づけば 10分、15分、20分……と、表情がどんどん前のめりに なっていきました。
Bくんは、孤独に黙々とやるよりも、
“誰かと一緒に体験を共有する” とスイッチが入るタイプだったのです。
これは珍しいことではありません。
子どもは本来、共同作業が得意な生き物。
一緒に笑う、一緒に驚く、一緒に「できた!」と言える空気は、
最強の“環境調整”になります。
◆30分後、私はほとんど何もしていなかった
面白いことに、
最初の5分だけ隣で一緒に楽しんだあとは、
Bくんは自分でどんどん進めていきました。
私はノートを整理していただけ。
それなのに、Bくんは黙々と集中し続けていました。
最初の “気持ちの入口” を一緒に作っただけ。
環境とは、物理的な刺激だけではなく、
「誰と、どんな雰囲気で始めるか」 という
心理的な空気も含めて整えるものなのだと、
Bくんの姿が教えてくれたのです。
◎順番リストを作るだけで安心感が生まれたCさん

いつも机に向かうとソワソワし始めるCさん。
決してやる気がないわけではない。
でも「何からやればいいのか」が分からなくなると、
急に不安そうな表情になり、手が止まってしまうタイプでした。
そこで試しに、私が横で
「今日やることの順番リスト」 を一緒に作ってみました。
【今日やること】
- 計算プリント 1枚
- 国語ワーク p.12
- 今日の漢字 5個
ただこれを書いて机の端に置いただけなのですが、
Cくんの表情がふっと和らぎました。
そして驚いたことに、
「最初はこれか。じゃあやるわ」
と、すぐに手を動かしはじめたのです。
順番が決まっているだけで、
子どもの脳は “見通しが持てる” ようになります。
見通しが持てると、
人は不安が消え、行動しやすくなります。
これは大人も同じですよね。
タスクがごちゃごちゃしていると動けないけれど、
順番が見えるだけで急にスムーズになる。
Cくんはまさにその典型例でした。
「見通しがあると、子どもは安心し、集中が続く」
これは、多くの子どもに当てはまる大事なポイントだと感じています。
■ 環境が整うと「興味が湧く」という現象が起こる
集中だけではありません。
環境が整うと、興味の湧き方まで変わるのです。
子どもは本来、知的好奇心のかたまりです。
でもその好奇心が奪われているだけ。
- すぐ目に入るゲーム
- いつでも通知が来るスマホ
- カラフルなおもちゃ
- 動き回る弟妹
- 机の上の紙切れ、ふせん、ペンの山
こうした刺激が1つあるだけで、
興味は横にそれていきます。
逆に言えば、
“余計な刺激を奪う” と、
本来持っている興味が自然に立ち上がる。
その瞬間を、私は毎日のように目にしています。
■ 家でできる「集中できる環境づくり」3つの基本
「じゃあ、家ではどうしたらいいの?」
という声に向けて、具体的にまとめます。
① 視界を減らす(物を減らす)
机の上に置いていいものは 1つだけ。
- 教材1冊
- またはノート1冊
他のものは収納へ。
視界に入る情報量をとにかく減らす。
これだけで集中が段違いに変わります。
② 時間を短く区切って“予告”する
「30分やりなさい」と言われると大人でも嫌です。
子どもならなおさら。
そこで
「5分だけやってみよう」
「このページのここまでだけやってみよう」
と区切ってあげる。
すると、子どもの脳は
「これくらいならできそうだ」と感じ、動き出せます。
③ “始める手間” をゼロにする
- 教材は開いた状態で置く
- 筆記具は1本だけ
- いつ終わるかを子どもが分かるようにしておく
準備ゼロでスタートできるようにしておくと、
集中の立ち上がりが爆速になります。
■ 「環境を整える」とは、子どもの能力を伸ばす以前の話
勉強を教える前に、
まず整えるべきは “環境のほう” です。
子どもは、やる気がないわけではありません。
集中力が弱いわけでもありません。
“集中できない状況で頑張らされている”
ただそれだけのことです。
子どもは、自分で環境を選べません。
だからこそ、大人がその土台をつくる必要があります。
環境さえ整えば、
子どもは自分から学びに向かい、
自分から考え、
自分から興味を持ち始める。
意欲とは、与えるものではなく、
「奪わなければ湧き上がるもの」 なのだと、
私は思っています。(Willbeもまだ完全ではありません)
■ 最後に:今日からできる“小さな一歩”
難しいことをする必要はありません。
今日からできることは、次の3つだけです。
- 机の上のモノを1分だけ片付ける
- やることを1つに決めて置いておく
- 「5分だけ」と短く区切って始める
これだけで、子どもは変わります。
「環境を整えると、子どもってこんなに集中するんだなぁ」
そう感じる瞬間が、きっとすぐ訪れます。
そしてその集中は、
勉強だけでなく、
読書にも、工作にも、遊びにも、
あらゆる場面で子どもを支える力になります。
子どもが本来持っている力を信じて、
いろいろ試してみましょう♪
まずは環境のほうを整えてあげましょう。
と言いながら、
𠮟ってはいけない
という意味ではありません。
私は叱ります。

