本日は、集中力をどうやって鍛えるべきか?学校の宿題に意味はないのではないか?といった小さいお子様をお持ちの保護者様のお悩みに、幼児期に鍛える手先の力といった低学年の間に学習基盤として大切なことをお話ししてまいります。
大した内容ではなく、当たり前のことで、日ごろ同じようなことをお伝えしております。「当たり前」を改めて言葉にするまとめ記事だと思っていただければ幸いです。
幼児期にこそ育てたい“巧緻性”という土台
幼児教育には昔から言われ続けている言葉があります。
「手は外に出た脳である。」
「指は第2の脳である。」
私はこの言葉を、教室で子どもたちを見つめる中で何度も実感してきました。
塾という場所にいると、どうしても「勉強ができる・できない」に視線が向きます。「出来る/出来ない」を見ても何も変わりません。それが、もともとは中学生を対象とした塾でありながら、今では年長さんや小学1年生のお子様まで指導するようになった理由の1つです。
しかし、本当に見なければいけないのはもっと根っこの部分です。
- 集中の仕方
- 観察の仕方
- 手をどう使うか
この3つは、すべて 指先の巧緻性(こうちせい) と密接に結びついています。
指先の巧緻性とは何か
「思考の細かさ」をつくる力
巧緻性とは、
指先を思い描いた通りに、正確に、繊細に動かす力です。
具体的には、
- ボタンを留める
- 箸を持つ
- ハサミで切る
- 折り紙を折る
- 積み木をそっと重ねる
- 筆圧を調整して文字を書く
こうした日常の動作ひとつひとつが、実は脳と深くつながっています。
幼児教育の世界では
「手を育てることは、脳を育てること」
と言われるほどです。

指先がよく動く子は、総じて 集中力が長く続きます。
一方、巧緻性が弱い子は、途中で飽きたり、雑になったり、注意が持続しません。
これは性格や生まれ持った能力という側面もありますが、大半は、経験の差 です。
なぜ指先が集中力とつながるのか
科学的にも、教育現場でも“同じ答え”になる
細かい作業をする時、脳の前頭前野(集中・思考・判断をつかさどる場所)が活発に働きます。
つまり、
手が育つ → 脳が育つ → 集中力が伸びる
という、とてもシンプルな関係があります。
実際にWillbeでも、指先が器用な子は——
- 図形の理解が速い
- ノートが丁寧
- 読み飛ばしが少ない
- 計算の処理が整っている
- 思考がきれいに整理できる
こういった特徴が現れます。
反対に、手の経験が薄い子は、学習のさまざまな場面で“つまずき”が生まれます。
巧緻性が弱い子に起こる“学習上のつまずき”

以下は、実際に現場で頻繁に見られる例です。
① ひらがなの形が整わない
筆圧コントロールが苦手で、線が震えたり丸がつぶれたりします。
② 図形認知が遅れる
図形は「見て・触って・作る」ことで理解が深まります。
手を通さない子は、イメージが育ちません。
③ 作業が遅い・飽きやすい
細かい動作が苦手だと、途中でイヤになりやすくなります。
④ 姿勢が崩れやすく、疲れやすい
手が疲れる → 姿勢が崩れる → 集中が切れる、の悪循環。
⑤ ミスが増える
「めんどう」以前に、“動作そのものがしんどい”ためです。
どれも性格ではなく、手の経験不足 が原因のひとつです。または、手の経験不足が性格を形成しているとも言えます。
ただ、指先の巧緻性を鍛えれば、すべからく”天才”になるとは申しません。
現代の子どもたちが巧緻性を失いかけている理由
スマホ時代の“手を使わない幼児期”
今の子どもたちは、
「目は忙しいけれど、手は働いていない」という状態にあります。
- YouTube
- アニメ
- タブレット学習
- ゲーム
画面を見る時間は増えましたが、
手で何かを“作り出す”体験は激減しています。
昔の子どもは、
折り紙をし、泥団子を作り、紐をむすび、石で遊ぶ生活の中で自然と巧緻性を育てていました。
今は意図的に手を使わせなければ、巧緻性は育ちにくい状況なのかもしれません。

家庭でできる“巧緻性トレーニング”5選
お金はかからない。必要なのは時間と手間だけ。
以下は、どのご家庭でもすぐに取り入れられる内容です。
① 折り紙(特に細かい折り箇所)
折り込みや小さな三角を作る作業は、最高の指先トレーニングです。
② 紐通し・ビーズ通し
穴に通すだけで、指先の精度が高まります。
③ ちぎり絵(紙を破る・丸める)
力加減の調整、形状認知、集中の持続。お子様が紙を無作為に破って散らかした場合、許容する心は大切なのかもしれません。
④ 積み木・レゴ
空間認知・構成力・創造性の土台。
計算の理解も、指先を通した“操作”から深まります。
Willbeの通常授業では、積み木やパズルを“考える道具”として使っています。
⑤ 箸遊び(豆つかみ)
親指・人差し指・中指のバランスを鍛えます。
どれも
「速さ」ではなく「丁寧さ」
がポイントです。

(Willbe休憩時間の様子)
なぜドリルより巧緻性なのか
本当は、ドリルも巧緻性も両方大事です。絶妙なバランスのもと成り立っています。
“手が育てば、すべての学力が伸びる”という事実
極端に聞こえるかもしれませんが、私は本気でこう考えています。
“巧緻性が育てば、学力は後からついてくる”
これは現場で何百人も見てきた実感です。
手が育つと——
- 文字が丁寧に書ける
- 図形がスッと理解できる
- 作業ミスが減る
- 集中が長く続く
- 考え方が論理的になる
学びの質が根本から変わります。
つまり、
巧緻性=学びの作法
なのです。
小/中学生の宿題は意味がない?
“米国デューク大学のハリス・クーパー教授は「小中学生の宿題はほとんど効果がない。むしろ悪影響を与える」という研究成果を発表した。”
“宿題のプラス効果がやっと現れるのは高校生の年齢になってからで、それでも1日2時間以上の宿題は逆に成績を下げることがわかった”
引用元:『週間事実報道』(8/31第127号)
一時期、上記の記事がSNS上でにぎわいを見せておりました。クーパー教授の論文そのものを見てみると、週刊事実報道の記事と少し論点がずれている気もしましが、問題はそこではありません。
小さなお子様は、一般に、宿題を効果的にするには土台が必要が必要だということです。思春期を超えて精神が大人に近づき宿題やテスト勉強をまじめに取り組むようになり効果があるという意味なのだと思います。精神面の成長と共に、指先で在ったり集中力そのものを鍛える習慣は、やはり大事だと私は思ってしまいます。
Willbeが「手の教育」にこだわる理由
遊びのように見えて、実は“根っこの学習”
Willbeの小学生・幼児指導では、
積み木、おはじき、折り紙、図形パズルをよく使います。
外から見ると「遊んでいるよう」に見えますが、
これらはすべて 巧緻性と空間認知を育てる本質的な学習 です。
子どもが積み木をどう持つか、
折り紙をどれくらい丁寧に折るか、
物を置くときの指先の動きはどうか。
私はそこを常に観察しています。
手が丁寧な子は、思考も丁寧。
手が雑な子は、思考も雑になる。
これは例外なく、教育現場で繰り返し見てきた光景です。
手で学んだ子は、大人になって強くなる
幼児期に手を育てた子は、将来こうなります。
- 仕事が丁寧
- 集中力がある
- 観察力が鋭い
- 段取りがうまい
- 読解力が高い
- ミスが少ない
- 人の話をよく聞ける
これは、幼児期の巧緻性が“人格の骨格”をつくるからです。
大人になって初めて気づくのです。
あの時の指先の経験が、人生を形づくっていたのだと。
最後に
私には”天才を育てる方法”は分かりません。
能力開発といった言葉自体が好きではありません。突き詰めていくと、能力開発と言われているものは、とても基本的なことだからです。積み木をしても頭は良くなりません。フラッシュ○○をやっても頭は良くなりません。
「天才ドリル」といった表現に文句を言ったこともあります。

Youtubeで少し紹介している「マナー豆」についても基本的なことです。本当はそういった教具めいたものではなく、もっとアナログで地道な世界観なのだと思います。「教具」になると「やらされ感」が出てしまいます。故に、Willbeでは休憩時間に自由に遊んでもらってる場合の方が多くあります。「教具」を買って「やらせよう」というものは続かず失敗する可能性もあります。
指を使って子ども達が遊んでいるなら、大人の度量で、管理ではなく、観ておいてあげることも大事なことだと思います。
幼児期こそ“手の教育”を
ドリルは逃げません。しかし巧緻性は“今”しか育ちません。
幼児期は、もっとも手が発達する時期です。
このタイミングに指先を育てることは、
目には見えなくても、確実に子どもの未来をつくる投資です。
ドリルも文字も計算も、あとでいくらでも習得できます。
しかし、
巧緻性は幼児期にしか十分に育ちません。
だからこそ——
- 時間をかけて
- 丁寧に
- 手を使わせる環境をつくること
これが、何よりの教育です。
手は脳を育て、
脳は思考を育て、
思考は人生をつくります。
あなたのお子様の未来が、
丁寧な「手」から始まりますように。
Willbe塾長
光庵 良仁


Willbeにおいてあるパズル/漫画/ボードゲーム/知育玩具はいつでもレンタル可能。

