【現代文キーワード】「シミュラークル」とは? 本物がどこにもない”ニセモノ”の話

現代文のキーワード「シミュラークル」を解説するブログ記事のサムネイル画像。サイバー調の少年のシルエットとともに、「シミュラークル」「本物がないニセモノ?メロンソーダ現象を解説!」という大きなキャッチコピーが配置されている。画像の右側には、シミュラークルやハイパーリアルの具体例として、鮮やかな緑色のメロンソーダ、SNSの「いいね」画面、マイク、テーマパークの城のイラストが描かれ、現代社会の消費やメディアの構造を視覚的に表現したデザイン。現代文キーワード

現代文の評論文、とくに「現代社会」や「メディア」「消費」をテーマにした文章を読んでいると、突然こんなカタカナ語に出くわすことがあります。

「シミュラークル」

……はい、もう見るからに難しそうですね。

現代文キーワード「形而上学」を説明してるときに、安易に登場させてしまったので、責任をとって詳しく説明します。

「シュミレーション?」「シミュレーター?」と、

似た言葉とごちゃ混ぜになって、頭の中がフリーズした人もいるかもしれません。

でも、安心してください。 この言葉、意味のコアはたった一つだけ覚えればOKです。

シミュラークル
= 「本物(オリジナル)が、どこにも存在しないコピー」


「は?」

「 コピーって、本物があるからコピーなんじゃないの?」


そう思いますよね。

その違和感こそが、今日のスタートラインです。 今回は、現代文の最重要キーワードの一つ「シミュラークル」を、限界まで噛み砕いて解説していきます。


まずは「ふつうのコピー」から考える

シミュラークルを理解するには、まず「ふつうのコピー」がどういうものかをハッキリさせるのが近道です。

たとえば、

あなたが美術の授業で「モナ・リザ」の絵をマネして描いたとします。

そのとき、頭のどこかにこういう感覚がありますよね。


本物(オリジナル)のモナ・リザは、
フランスのルーブル美術館にある。

自分が今描いているのは、
その本物のマネ(コピー)だ。


つまり、

ふつう私たちは「コピー」という言葉を、

本物(オリジナル)
→ それをマネしたもの(コピー)

という順番で考えています。

  • コピーの後ろには、必ず「本物」がいる。
  • コピーは、その本物を指さしている。

これが、私たちが当たり前だと思っている「コピー観」です。

ところが——

現代社会には、この当たり前が通用しない、奇妙な”コピー”があふれているのです。


本物が、どこにもない

(メロンソーダの謎)

ここで、ちょっと変な質問をします。

「メロンソーダって、メロンの味がしますか?」

……たぶん、しませんよね(笑)。

あの鮮やかな緑色の飲み物。

おいしいけれど、本物のメロンをかじったときの、あの上品な甘さとは、似ても似つきません。

では、もう一つ質問です。

「あの『メロンソーダの味』の”本物”って、世界のどこかにありますか?」

これも、ないんです。

畑のメロン?ちがう。
高級メロン?ちがう。

あの「メロンソーダ味」は、本物のメロンをマネしたものではなく、いつのまにか「メロンソーダ味」という独立した一つの味として、私たちの中に存在してしまっている。

いちご味のお菓子も、ぶどう味のグミも、ぜんぶそうです。

本物のいちごやぶどうを、忠実にコピーしたものではありません。

「いちご味」「ぶどう味」という、本物とは別の”何か”が、ひとり歩きしているのです。

これが、シミュラークルです。

本物(オリジナル)が、どこにもない。 なのに、コピーだけが堂々と存在している。

「○○のマネ」ではなく、「○○のマネのフリをした、それ自体が中身のないもの」。

あなたの脳内変換は、こうしておきましょう。

シミュラークル
= 「元ネタ(本物)がないのに、平気な顔をしているニセモノ」


ニセモノが、本物を追い越す

(ハイパーリアル)

ここからが、現代文の筆者が本当に言いたい、ちょっと怖い話です。

シミュラークル(本物なきニセモノ)が世の中にあふれていくと、最後にはこんな逆転現象が起きます。

ニセモノのほうが、本物よりも”リアル”に感じられてしまう。

この状態を、専門用語で「ハイパーリアル」と言います。

脳内変換

「ニセモノが本物を追い越して、こっちが現実っぽくなっちゃった状態」

例で見ましょう。

例①:旅行とSNS

あなたが絶景スポットに旅行に行ったとします。

目の前には、本物の美しい景色が広がっている。 でも、気づけばスマホを構えて、「映える」写真を撮るのに必死になっていませんか?

そして家に帰って、「いいね」がたくさんついた瞬間に、いちばん満足する。 本物の景色を自分の目で味わった記憶より、画面の中の”加工された景色”のほうが、自分の思い出として残っていく。

これ、おかしいと思いませんか?

本物の景色(オリジナル)よりも、写真というコピーのほうが、リアルで価値あるものになってしまっている。

これがハイパーリアルです。

例②:テーマパーク

人工的に作られた夢の国は、現実の街よりもキラキラして、清潔で、楽しい。

「現実よりも、こっちのほうが本物っぽい(理想的)」と感じてしまう。

作り物のはずなのに、現実を追い越してしまっているのです。

例③:アイドルやキャラ

画面の向こうの「いつも笑顔で完璧なあの子」。

それは事務所やファンが作り上げたイメージ(記号)であって、生身のその人そのものではないかもしれません。

でも私たちは、その”作られたイメージ”のほうを「本物のあの子」だと思って応援している。

筆者たちは、こう警告します。

「現代人は、本物の現実を生きているつもりで、実は“本物なきコピー(シミュラークル)”の世界を生きているんじゃないか?


ちょっとだけ深掘り「像の4段階」

この考え方を言い出したのが、ジャン・ボードリヤールというフランスの思想家です。

(名前は覚えなくてOK。「あ、こういうこと言った人がいるんだ」程度で十分です)

詳しくは、第11回「現代文あるある⑪【消費社会】― あなたの「欲望」の主人は誰か?」
👉 https://ako-juku.com/gendaibunaruaru-11/

彼は、「イメージ(像)」が変化していく4つの段階を整理しました。 ざっくり、こんな流れです。

像の4段階
  • 第1段階
    本物を、ちゃんと映している
    (ただの写真みたいなもの)
  • 第2段階
    本物を、ちょっとごまかして盛っている(盛れてる自撮り)
  • 第3段階
    本物がないのを、隠している
    (あるフリをしている)
  • 第4段階
    もう本物とは一切関係ない、
    それ自体が完結したニセモノ
    (=シミュラークル)

最初は「本物のコピー」だったものが、段階を追うごとに本物から離れていき、最後には本物と無関係な”純粋なニセモノ”になってしまう。

この最終形が、シミュラークルなのです。

ちなみに余談ですが、映画『マトリックス』は、このボードリヤールの考え方に強い影響を受けて作られています。 「自分が生きているこの現実、本当に本物?」という、あのゾクっとする問いですね。

コラ画像?
インスタで盛って見ました?
 →だれこの人。

これらがシミュラークルです。


現代文あるあるとリンク!

シミュラークルは「現代」ステージの武器

当ブログのシリーズ「現代文あるある」を読んでくれた人なら、この言葉がどこに位置するか、もうピンときているはずです。

そう、いちばん新しい「ポスト構造主義(現代)」のステージの言葉です。

思い出してください。 構造主義の回で、世界は「記号」でできているという話をしました。

  • 「いいね」も記号
  • ブランドのロゴも記号
  • メロンソーダの緑色も記号。

シミュラークルは、
その記号の話の”進化版”です。

かつて:
記号は、何か本物(中身)を指さしていた

現代:
記号だけがどんどん増えて、
指さす先の本物が消えてしまった

本物がないまま、記号(コピー)だけがぐるぐると自己増殖していく。

これがシミュラークルの世界であり、現代社会の正体だ——

と筆者たちは言いたいのです。

シミュラークルを使った予測リーディング

超実践編

ここまで分かると、入試本番で強烈な「予測リーディング」ができます。

本文中に、次のような言葉が出てきたら、頭の中で「シミュラークル警報」を鳴らしてください。

  • 筆者が問題視しているもの(敵)のサイン
  • オリジナルのないコピー
  • 本物の喪失記号だけが増殖する
  • 現実よりリアルな虚構
  • イメージ
  • 表層・うわべ

これらが出てきたら、筆者の言いたいことはほぼ確定します。

「現代人は、中身(本物)を見失って、うわべのイメージ(記号・コピー)ばかりの世界を生きてしまっている。それでいいのか?」

選択肢を選ぶときも同じです。

「本物とコピーをきちんと区別できる」という前向きな内容の選択肢は、シミュラークルの文章では”罠”であることが多い。

筆者は逆に、「もう本物とコピーの区別なんてつかなくなっている」という、モヤッとした方向を主張しているからです。

まとめ

難しい言葉は、世界を見る「新しいメガネ」

シミュラークル
= 本物(オリジナル)が存在しないコピー

ハイパーリアル
= そのニセモノが、
 本物よりリアルに感じられる状態

最初は「は? コピーに本物がないってどういうこと?」とイラッとしたかもしれません。

でも、ここまで読んだあなたは、もう世界の見え方が少し変わっているはずです。

  • メロンソーダを飲むとき。
  • 映え写真を撮るとき。
  • 推しのアイドルに夢中になるとき。

「あ、これってシミュラークルかも」と、ふと立ち止まれる。

難しい言葉は、あなたをいじめる呪文ではなく、いつもの景色を新しく見せてくれる「メガネ」なのです。

次に評論文で「シミュラークル」を見かけたら、ビビらずにこう思ってください。 「お、筆者が”本物なきコピーの時代”について語りだしたな」と。

それだけで、あなたの読解は、もう一歩、本物に近づいています。

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