はじめに
姫路周辺から誰も選ばないからこそ、書く価値がある
兵庫県赤穂市。
この地で大学受験塾を営んでいると、生徒たちの志望校はだいたい決まってしまいます。
岡山大学。
兵庫県立大学。
神戸大学。
大阪大学。
関関同立。
産近甲南。
高校3年生の春ぐらいに、京都工芸繊維大学、滋賀県立大学が良い大学だと気が付く子もいます。
これが、赤穂の高校生にとっての「普通の景色」である。
悪くはないし、仕方のないことだと思っている。
赤穂から、北海道函館市の大学を第一志望にする高校生は、正直なところ、ほぼゼロだ。
距離にして約1,000km。 飛行機を乗り継ぎ、片道半日。 冬は氷点下が当たり前の世界。
「赤穂の親御さんに、北海道の大学を勧めて、果たして響くのか?」
普通に考えれば、響かない。
それでも、私はこの記事を書く。
なぜなら、
この大学を「知らないまま」進路を決めてしまうのは、ITやデザインに本気で興味を持つ高校生にとって、あまりにももったいないからだ。
偏差値という単一の物差しで大学を選ぶと、必ず見落とされる名門がある。
このシリーズで紹介してきた、
- 日本栄養大学(女子栄養大学)の養護教諭養成
- 兵庫県立大学のなゆた望遠鏡とSPring-8
- 京都工芸繊維大学の工学×デザイン
- 日本大学危機管理学部のインテリジェンス
- 三重大学の忍者学
- 日本大学芸術学部の業界輩出力
- 國學院大學の博物館と神道学
- 長浜バイオ大学の研究密度
- 福岡大学の九州考古学
これらと同じく、
公立はこだて未来大学は、偏差値表だけ見ていたら絶対に出会えない、日本でも稀有な専門性を持った大学なのである。
偏差値だけで大学受験失敗、成功、勝ち、負けを語ることほど悲しいことはない。
今日はその正体を、現役塾長の視点で、徹底的に解説していきたい。
公立はこだて未来大学とは何か
基本データ
- 正式名称:
公立はこだて未来大学 英語名:Future University Hakodate(略称:FUN) - 所在地:
北海道函館市亀田中野町 - 設立:
2000年4月 - 設置者:
公立大学法人公立はこだて未来大学 - 学部:
システム情報科学部(1学部のみ) - 学科:
情報アーキテクチャ学科
複雑系知能学科
河合塾偏差値:50.0〜52.5 共通テスト得点率:65%〜70%前後
数字だけ見れば、
「あぁ、地方公立大学ね」
「姫路周辺の公立高校から共通テストに失敗して北海道に行ったんでしょ?」
で終わってしまう。
しかし、この大学を「地方公立大」というカテゴリーで括るのは、任天堂を「玩具メーカー」と呼ぶようなものだ。
間違ってはいないが、本質を捉えていないと思うのです。
なぜ「未来大学」なのか
名前に込められた覚悟
日本の大学で、
「未来大学」
を名乗っているのはここだけだ。
しかも「公立」である。
この大学が開学したのは2000年。
インターネットが社会に浸透し始めた、まさにその瞬間だった。
「これからの時代、IT人材が決定的に不足する」
「しかし、ただプログラミングができる人材を量産しても意味がない」
「人間と社会、そしてテクノロジーをつなぐ”システム”そのものをデザインできる人材を育てる必要がある」
そういう問題意識のもと、北海道と函館市が共同で設立したのが、この大学だ。
普通の地方公立大学が「経済学部」「教育学部」「人文学部」といった旧来の枠組みを引きずる中で、
「システム情報科学部」という、それまで日本に存在しなかった学部名で勝負した。
この決断自体が、すでに尋常ではない。
はこだて未来はなぜ名門なのか?
学部名に秘められた意味
「情報学部」ではなく「システム情報科学部」
ここが、この記事で最も重要なポイントである。
世の中には、
「情報学部」
「情報科学部」
「情報工学部」
を持つ大学は山ほどある。
しかし、
「システム情報科学部」を持つ大学は、日本ではここだけだ。
「システム」という一語が、
なぜそんなに重要なのか。
「プログラミングができる」と「システムを創れる」は違う
たとえばあなたが、
コンビニのレジに並んでいるとする。
レジには、
バーコードを読み取る装置があり、
決済端末があり、
在庫管理システムにつながっており、
本部のサーバーと連動している。
店員さんは、
QRコード決済、
クレジットカード、
現金、
電子マネー、
ポイントカードを、
ほぼ間違えずに処理する。
これは、
「プログラマーが綺麗なコードを書いた」
だけで実現しているわけではない。
・人間の認知特性
・ユーザーの行動パターン
・業務フロー、
・ハードウェアとソフトウェアの連携
・ネットワーク設計
・データベース構造
・セキュリティ
・そしてデザイン
これらすべてが噛み合って、
初めて「動くシステム」になる。
つまり、
「コードを書く力」は、
システムを構築する力の、
ほんの一部分に過ぎない。
公立はこだて未来大学は、この「システムそのものをデザインする力」を学部レベルで体系的に教える、日本で唯一の大学なのである。
2つの学科が示す、独自の世界観
この大学のシステム情報科学部には、
2つの学科がある。
この学科名・コース名を見て、
「何の話か全然わからない」
と感じた方は、正常な反応である。
普通の高校生・保護者にとって、「情報アーキテクチャ」「複雑系」「知能システム」という言葉は、馴染みがない。弊塾の岡山大学大学院生が中学生に向って「アーキテクチャ」と口走って全員を置いてけぼりにしたのは私にとって懐かしい思い出です。
しかし、これらの言葉こそ、これからの時代に最も必要とされる学問領域なのだ。
4つのコースを、塾長が言葉で訳す
専門用語をそのまま並べても伝わらないので、現役塾長として、できるだけ高校生・保護者に伝わる言葉で説明したい。
①情報デザインコース
「使いやすさ」を設計する人
スマホのアプリを使っていて、
「このアプリ、めちゃくちゃ使いにくい」
と感じたことはないだろうか。
逆に、
「このアプリ、説明書なしでも全部わかる」
と感じることもあるはずだ。
この差は、プログラマーの腕の差ではない。
「情報デザイン」の差である。
人間がどうやって情報を受け取り、どう判断し、どう操作するか。
その認知プロセスを科学的に分析し、最適なUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザー体験)をデザインする。
これは美術ではない。
科学であり、
心理学であり、
認知科学である。
②情報システムコース
「仕組み」を作る人
社会のあらゆる場面に、情報システムは埋め込まれている。
- 病院の電子カルテ
- 銀行のオンラインバンキング
- 物流会社の配送管理
- 自治体の住民サービス
これらを「実際に動くシステム」として構築する技術を学ぶ。
ソフトウェア工学
データベース
ネットワーク
セキュリティ
ここは比較的、伝統的な「情報工学」に近い領域である。
③複雑系コース
「世界そのもの」を解読する人
ここからが、未来大学の真骨頂だ。
「複雑系(complex systems)」とは、
多数の要素が相互作用することで、
全体として予測困難な振る舞いを示すシステム
のことだ。
・天気
・株価
・生態系
・人間の脳
・SNSの情報伝播
・交通渋滞
・感染症の拡大。
これらはすべて「複雑系」である。
これぐらいの数式(関係性)ならば人間の脳みそでも瞬時にイメージが可能である。
「複雑系」も、シンプルな数式では予測できないが、コンピュータシミュレーションと数理モデルを使えば、その振る舞いを解析できる。
なぜ複雑系が「未来」の学問なのか。
AIが進化し、データが膨大になった今、
「複雑系を解析できる人材」は、
・金融
・防災
・医療
・マーケティング
・環境問題
あらゆる分野で奪い合いになっている。
文系の高校生からすれば「数学・物理の世界」に見えるかもしれないが、
実際には
・経済学
・社会学
・生物学
とも深く接続している、
極めて学際的な領域である。
余談ではあるが、
大学とは「数学/英語/国語」といった言葉を使って「理科」「社会」を専門的に学ぶ場所だと私は思っています。
故に、興味関心の土台は理科と社会であり、本当に大切にして欲しいことは小学生のうちに出来うる限り「理科」「社会」に触れることなのです。
④知能システムコース
「考える機械」を作る人
ChatGPTに代表される、現代のAIブーム。
しかし、本当の「知能」とは何か。
機械学習
深層学習
ロボティクス
自然言語処理
画像認識。
これらの技術を統合し、「人間のように考え、行動するシステム」を構築する研究を行う。
ここで重要なのは、
「AIが書いたコード」を使うだけの人と、
「AIそのものを設計・改良できる人」は、
まったく違う
ということだ。
未来大学は、後者を育てる場所である。
校舎が「学問」そのものになっている ― 山本理顕の建築

ここで、少し建築の話をしたい。
公立はこだて未来大学のキャンパスは、世界的に著名な建築家、山本理顕(やまもと りけん)氏による設計だ。
山本理顕氏は、2024年に建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞した人物である。
つまり、世界トップクラスの建築家が設計した校舎で学べる、ということだ。
しかし、重要なのは「有名建築家が建てた」ということではない。
この校舎の設計思想そのものが、未来大学の教育哲学を体現しているということだ。
「壁のない校舎」が意味するもの
未来大学の校舎には、ほとんど壁がない。
教室と廊下、研究室と共用スペース、学年の境目、専門分野の境目。
それらが、ガラスとオープンスペースによって、視覚的にも機能的にも溶け合っている。
普通の大学では、
- 1年生のフロアと4年生のフロアは別
- 教員の研究室は学生から見えない
- 異なる専門の学生は廊下ですれ違うこともない
しかし、未来大学では、
- 1年生が4年生の卒業研究を覗ける
- 教授が学生にいつでも見える場所で研究している
- 情報デザインの学生と複雑系の学生が、同じスペースで作業する
なぜ、ここまで「見える化」にこだわったのか。
それは、
現代のITとデザインは、「個人のスキル」ではなく「チームと環境」によって生まれる
という哲学があるからだ。
Apple、Google、Pixarのオフィスを見ればわかる。
世界トップのクリエイティブ企業は、すべて「壁のない空間」を採用している。
それを、大学の校舎で実現したのが未来大学なのだ。
プロジェクト学習(PBL)
1年間、ガチで社会課題に取り組む
未来大学を語る上で、絶対に外せないのが、
3年次の「プロジェクト学習(Project Based Learning, 通称PBL)」
である。
これが、この大学のすべてを象徴していると言っても過言ではない。
どんなことをやるのか
3年生になると、学生は10人程度のチームに分かれ、
1年間かけて、実社会の課題を解決するプロジェクトに取り組む。
テーマは多岐にわたる。
- 函館の観光客向けの新しいアプリ開発
- 地元漁業のIoT化
- 高齢者の見守りシステム
- 防災情報の可視化
- 学習支援AIの開発
- インタラクティブアート
これらは「授業の演習」ではない。
実際に企業や自治体、地域住民と連携した、本物のプロジェクトである。
要件定義
デザイン
実装
テスト
発表
改善。
ソフトウェア開発の全工程を、
1年かけて経験する。
なぜこれが「ヤバい」のか
普通の大学の情報系学部の学生は、
- 1〜2年
数学、英語、教養科目、プログラミング基礎 - 3年
より専門的な講義 - 4年
卒業研究
という流れで学ぶ。
つまり、「実際に何かを作る」のは4年生になってから、というケースが多い。
ところが、未来大学の学生は、
3年生の段階で、すでに「1年間の実プロジェクト経験」を持っている。
この差は、就職活動の場で決定的になる。
企業の採用担当者が「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」を聞いたとき、
未来大の学生は、
はい。
3年次のプロジェクト学習で、◯◯市の観光促進アプリを開発しました。
リーダーとしてチーム10名のスケジュール管理を行い、UIデザインから実装まで担当しました。
実際にApp Storeでリリースされ、ダウンロード数は◯◯件です。
と、本物の実務経験を語れる。
これは、企業から見れば、
もう新人研修いらないんじゃないか?
レベルの即戦力性である。
なぜ偏差値50の公立はこだて未来大学が、任天堂やGoogleに強いのか?
ここが、
この記事で最もインパクトのある部分だ。
公立はこだて未来大学の就職実績を、
ご覧いただきたい。
主な就職先
IT・メガベンチャー系
- Yahoo! JAPAN
- 楽天
- LINEヤフー
- メルカリ
- DeNA
- サイバーエージェント
- リクルート
- mixi
(※年度によって変動するが、近年の傾向)
メーカー・クリエイティブ系
- 任天堂
- ソニー
- パナソニック
- 富士通
- NEC
- 日立製作所
システムインテグレータ系
- NTTデータ
- 野村総合研究所(NRI)
- 日本IBM
- アクセンチュア
ゲーム・エンタメ系
- カプコン
- バンダイナムコ
- セガ
これは、慶應大学や早稲田大学の理工学部の就職実績と比較しても、まったく見劣りしない。
いや、
「IT企業に絞った場合の内定率」で言えば、
慶應・早稲田を上回る年もある
というのが、実態だ。
なぜ、企業はわざわざ函館まで採用に来るのか
兵庫から函館は約1,000km。
東京から函館は約700km。
それでも、
日本を代表するIT企業の人事担当者は、わざわざ函館までやってくる。
言いたくはないが、地方公立大学の使命は、地方創生なのだ。
地方公立大学へ進学するということは、その地方に骨をうずめる覚悟がある程度必要だ。
しかし、はこだて未来大学は違う。
なぜか。
理由は3つある。
①「即戦力」が手に入るから
前述のプロジェクト学習(PBL)を経験している未来大の学生は、入社時点で「チームでプロジェクトを完遂した経験」を持っている。
普通の大学新卒だと、入社後1〜2年かけて教える内容を、すでに身につけている。
採用コストを考えれば、函館までの旅費など誤差である。
②「デザイン思考」が身についているから
これからのIT企業は、「コードが書ける人」ではなく「ユーザー視点で価値を創れる人」を求めている。
未来大の学生は、4年間「ユーザーの課題は何か」を問い続ける訓練を受けている。
これは、他の情報系大学では真似できない強みだ。
③「変態的に好きな子」が集まっているから
これは塾長の私見だが、
公立はこだて未来大学を志望する高校生は、
「ITが好き」
「デザインが好き」
「社会の仕組みを変えたい」
という、強烈な動機を持っている子が多い。
なぜなら、
この大学に来るためには、「偏差値の物差し」を捨てる必要があるからだ。
「偏差値が同じくらいなら、もっと有名な大学に行けばいいじゃん」
という親や先生の反対を押し切って、わざわざ函館を選ぶ高校生は、
それなりの覚悟と意志を持っている。
採用担当者は、その「覚悟」を見ている。
大学院進学率も高い
研究者ルートも開かれている
意外と知られていないが、未来大学は大学院進学率も決して低くない。
主な進学先大学院:
- 公立はこだて未来大学大学院
(システム情報科学研究科) - 北海道大学大学院
- 東北大学大学院
- 筑波大学大学院
- 東京大学大学院
- 東京科学大学大学院
(旧東京工業大学) - 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
- 奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)
- 京都大学大学院
特に、
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)
東京科学大学
への進学者が多いのが特徴だ。
これらは「情報系大学院の名門」として知られている。
つまり、未来大学に入学した学生は、
就職するも良し、研究の道に進むも良し、両方の選択肢が開かれている。
これは、地方公立大学としては破格の環境である。
学費という現実的な視点
公立大学であることの価値
ここで、現実的な話をしたい。
公立はこだて未来大学は「公立大学」である。
つまり、学費が極めて安い。
入学金
- 北海道民:282,000円
- 道外出身者:423,000円
年間授業料
- 535,800円(全員共通)
兵庫県赤穂市から進学する場合、道外出身者として入学金は423,000円となるが、
それでも、4年間の総額は約260万円程度。
私立の理工系大学(年間約170万円×4年=680万円)と比較すると、
400万円以上、安い。
ここに、地方在住の家族にとっては、大きな意味がある。
「IT系に進ませたいけど、私立は学費が厳しい」
「国立大学の情報系は偏差値が高すぎて届かない」
そういう家庭にとって、
「公立で、しかも日本トップクラスのIT教育を受けられる」
未来大学は、極めて貴重な選択肢になる。
下宿代を加味しても、私立に通わせるよりトータルで安く済むケースが多い。
入試の特殊性
「思考力」が問われる試験
未来大学の入試には、いくつかの特徴がある。
一般選抜(前期日程)
- 共通テスト:5教科7科目+情報I
- 個別試験:数学(数III含む)、理科、英語
理系標準的な構成だが、共通テストの配点比率が比較的高い。
一般選抜(後期日程)
- 共通テスト:5教科
- 個別試験:小論文
ここが、Willbeのような「総合型・推薦対策塾」が得意とする領域である。
未来大学の小論文は、
「自分のアイデアを論理的に組み立てる力」
を問う。
定型的な「型」を覚えるだけでは突破できない。
学校推薦型選抜
- 共通テストなし
- 書類審査+面接+小論文
これも、思考力勝負である。
「将来、どんなシステムを作りたいか」
「社会のどんな課題に関心があるか」
こういった問いに、自分の言葉で答えられる高校生でなければ、合格できない。
逆に言えば、
「数学が苦手だけど、ITやデザインに強烈な興味がある」高校生にも、道は開かれている。
これは、未来大学の懐の深さである。
函館という街そのものが教材になる
最後に、立地の話をしたい。
「北海道函館って、何があるの?」
赤穂の高校生からすれば、想像もつかないかもしれない。
函館は、人口約24万人の地方都市である。
しかし、
- 江戸時代末期、日本で最初に開港した5港のひとつ
- ロシア、中国、欧米の文化が混ざり合う独特の街並み
- 函館山の夜景は世界三大夜景のひとつ
- 海産物、温泉、歴史的建築の宝庫
文化的・歴史的な厚みは、地方都市としては突出している。
そして、
未来大学はこの街と深く結びついている。
PBLのテーマには、
必ず「函館の課題」が含まれている。
- 観光客のスマホ利用パターン分析
- 地元水産業のDX
- 高齢化社会の見守りシステム
- 函館バスの運行最適化
学生は4年間を通して、
「実在する街の、実在する課題」を解決する経験
を積む。
これは、
東京の大都市にある
マンモス大学では決して得られない経験
だ。
「東京の便利さ」を捨てる代わりに、「街そのものを実験場にできる自由」を得る。
これが、未来大学を選ぶ意味である。
赤穂から第一志望にする子はほぼいない
ここまで、未来大学の魅力を語ってきた。
それでも、
赤穂から第一志望にする高校生は、
おそらくこれからもほとんど現れないだろう。
理由は明白だ。
物理的に遠すぎる。
文化圏が違いすぎる。
そもそも、知る機会がない。
赤穂で「IT系に進みたい」となれば、
- 神戸大学工学部情報知能工学科
- 大阪大学基礎工学部情報科学科
- 京都工芸繊維大学情報工学課程
- 滋賀大学データサイエンス学部
- 滋賀県立大学工学部
- 関西大学総合情報学部
- 立命館大学情報理工学部
このあたりが「現実的な志望校」になる。
これは、自然な選択であり、間違いではない。
しかし、
「もし、赤穂の高校生に、ITやデザインに対する強烈な情熱を持っている子がいたら」
「もし、その子が”普通の選択”に違和感を覚えているなら」
私は、その子に、
「函館という選択肢があるよ」
と伝えてあげたい。
あるいは、
上記大学を第1志望としながらも
共通テストで思うような点数
を取れなかった高校生に伝えたい。
失敗ではない。
運命だったのだ。
自信をもって公立はこだて未来大学
を目指し直せば良いし、
自信を持って進学すれば良い。
名門の定義を、もう一度
このシリーズで一貫して語ってきたことがある。
名門とは、偏差値が高いことではない。
ある分野において、
- 体系的な教育が確立していること
- 卒業生が継続的に輩出されていること
- 業界からの評価が確立していること
- 他では真似できない独自性があること
これらを満たす大学を「名門」と呼ぶ。
公立はこだて未来大学は、
- システム情報科学という独自の学問体系
- Google、任天堂、ソニーなどへの継続的な人材輩出
- IT・デザイン業界での確固たる評価
- 「壁のない校舎」「PBL」という他大学にない教育設計
これらすべてを満たしている。
偏差値50〜52.5という数字
に騙されてはいけない。
ここは、紛れもなく、
日本のIT・デザイン教育における「隠れた名門」
である。
向いている高校生像
最後に、この大学が向いている高校生のチェックリストを示しておく。
こんな高校生に向いています
CHECKLIST
こんな高校生に、向いている。
- 01 プログラミングや、デジタルで何かを作ることが好き
- 02 アプリやWebサービスの「使いやすさ」に敏感
- 03 数学や論理的思考が嫌いではない
- 04 チームで何かを作り上げる経験に魅力を感じる
- 05 「社会の仕組みを変えたい」という気持ちがある
- 06 都会の便利さより、自分の興味を優先できる
- 07 偏差値や知名度より、中身で大学を選びたい
- 08 親元を離れて、自立した生活を送る覚悟がある
RESULT
このうち 5 つ以上当てはまるなら、
公立はこだて未来大学は、あなたにとって最高の環境になる可能性が高い。
後悔しない志望校選びのために。
情報系・デザイン系・美大志望者のための「究極の選択肢」
【比較①】「情報学部」と「システム情報科学部」は何が違うのか
ここで、未来大学を検討する高校生・保護者が必ず疑問に思う点を整理しておきたい。
「情報学部」
「情報科学部」
「情報工学部」
「システム情報科学部」
似たような学部名がずらりと並ぶが、これらは何が違うのか。
塾長として、できるだけシンプルに整理する。
COMPARISON
情報系4学部、何が違うのか。
01 / ENGINEERING
情報工学部
動かす。
コンピュータの仕組み、ハードウェア、ソフトウェアの実装技術を中心に学ぶ。CPU、OS、アルゴリズムの高速化。
京都工芸繊維大学 情報工学課程
九州工業大学 情報工学部 など
02 / SCIENCE
情報科学部
考える。
数学的・理論的な側面から情報を扱う。計算理論、暗号、データ構造、形式言語。研究者志向の人向け。
大阪大学 情報科学研究科系
お茶の水女子大学 情報科学科 など
03 / INFORMATICS
情報学部
使う。
情報を社会・人間・経営に応用する方向に広がる。文理融合的で、メディア論や情報社会論なども扱う。
京都大学 情報学部
東京大学 工学部システム創成学科系 など
04 / SYSTEM
システム情報科学部
つなげる。
人間×デザイン×テクノロジー×社会を「ひとつのシステム」として捉え、設計・構築する力を養う。
公立はこだて未来大学
(日本で唯一の学部名)
CONCLUSION
システム情報科学部とは、「情報工学」+「情報科学」+「情報学」+「デザイン学」を、
4年間で横断的に学べる、日本で唯一の学部である。
情報工学部 ― 「動かす」ことに強い
代表例
京都工芸繊維大学 情報工学課程
九州工業大学 情報工学部
など。
コンピュータそのものの仕組み、ハードウェア、ソフトウェアの実装技術を中心に学ぶ。
CPUがどう動くか、OSがどう設計されているか、アルゴリズムをいかに高速化するか。
エンジニアリングの基礎体力をつけたい人向け。
情報科学部 ― 「考える」ことに強い
代表例:
大阪大学 情報科学研究科系
お茶の水女子大学 理学部情報科学科
など。
数学的・理論的な側面から情報を扱う。
計算理論、暗号、データ構造、形式言語。
研究者・大学院進学を視野に入れる人向け。
情報学部 ― 「使う」ことに強い
代表例:
京都大学 情報学部
東京大学 工学部システム創成学科系
など。
情報を社会・人間・経営に応用する方向に広がる。
文理融合的な要素も含み、メディア論や情報社会論なども扱われることが多い。
システム情報科学部 ― 「つなげる」ことに強い
そして、公立はこだて未来大学。
人間 × デザイン × テクノロジー × 社会
を「ひとつのシステム」として捉え、それを設計・構築する力を養う。
コードを書くだけでも、理論を研究するだけでも、応用を考えるだけでもない。
「全部を統合して、動くシステムを作り上げる」
これが、システム情報科学部の独自性である。
別の言い方をすれば、
「情報工学」+「情報科学」+「情報学」+「デザイン学」を、4年間で横断的に学べる学部。
これが、日本で公立はこだて未来大学にしか存在しない理由だ。
【比較②】公立はこだて未来大学 vs 会津大学
情報系公立大の二大巨頭
「公立で情報系の大学を検討している」
この条件で大学を探すと、必ず2つの名前が出てくる。
公立はこだて未来大学(北海道函館市)
会津大学(福島県会津若松市)
両校とも、
- 公立大学
- IT・コンピュータ専門の単科大学
- 偏差値帯がほぼ同じ
- 地方都市にキャンパス
という共通点を持つ、いわば「情報系公立大学の二大巨頭」である。
塾長として、この2校を比較しておきたい。
会津大学とは何か
会津大学は1993年に開学した、日本初の「コンピュータ理工学部」を持つ大学。
未来大学(2000年開学)よりも7年早く生まれた、IT特化型公立大学のパイオニアである。
特徴は明確だ。
- 学部はコンピュータ理工学部のみの単科大学
- 講義の多くを英語で行う(外国人教員比率が約4割)
- 国際的なプログラミングコンテストでの実績が豊富
- ソフトウェア開発・ハードウェア設計に強い
「ガチガチに技術を極めたい」という人には、極めて強い大学だ。
公立はこだて未来大学との違い
両校を、塾長視点で比較する。
| 比較軸 | 公立はこだて未来大学 | 会津大学 |
|---|---|---|
| 開学 | 2000年 | 1993年 |
| 学部 | システム情報科学部 | コンピュータ理工学部 |
| 強み | デザイン×IT、PBL、複雑系 | 純粋なコンピュータ技術、英語教育 |
| 校舎の特徴 | 山本理顕設計、壁のない空間 | 機能的なIT特化キャンパス |
| 学風 | 学際的、デザイン志向 | エンジニアリング志向、国際派 |
| 向いている人 | 「人間と社会をつなぐシステムを作りたい人」 | 「世界レベルの技術者になりたい人」 |
| 卒業後の傾向 | UXデザイナー、プロダクト開発 | ソフトウェアエンジニア、研究職 |
どちらを選ぶべきか
ざっくりとした目安として:
会津大学が向いている人
- 純粋にコンピュータ技術を極めたい
- 英語環境で鍛えられたい
- 国際的なITエンジニアを目指したい
- ハードウェアにも興味がある
公立はこだて未来大学が向いている人
- 技術 + デザインの両方をやりたい
- ユーザー体験(UX)に強い興味がある
- チームでの開発・プロジェクト経験を積みたい
- 社会課題の解決にIT技術を使いたい
どちらも公立で学費が安く、就職実績は強い。
「コードを書く力」を極めたいなら会津、
「動くシステムを社会に届ける力」を養いたいなら未来大学。
これが、塾長としての見立てである。
ちなみに、芝浦工業大学(私立・東京都江東区)も比較対象に挙がる大学だが、
- 芝浦は私立(学費は4年で約700万円)
- 未来大学・会津大学は公立(学費は4年で約260万円)
という決定的な学費差がある。
「私立は厳しいけれど、IT・工学を本格的に学びたい」という家庭にとって、未来大学・会津大学は極めて貴重な選択肢である。
【比較③】美大とデザイン
「美大に行きたいけど就職が不安」という子への、第三の選択肢
このシリーズを読んでいる保護者の方の中には、
「うちの子、絵やデザインが好きなんだけど、美大に行かせて将来食べていけるのか不安」
と考えている方が、相当数いるはずだ。
実は、未来大学は、
この悩みに対する、最も合理的な答えのひとつ
になり得る大学である。
美大進学の「リアルな現実」
多摩美術大学
武蔵野美術大学
東京藝術大学
京都市立芸術大学。
これらの美大・芸大は、確かに芸術の名門だ。
しかし、現実的な話として、
- 私立美大の学費は年間180万円〜200万円(4年で約800万円)
- 卒業後、デザイナーとして安定就職できるのは一部
- フリーランス・契約社員になるケースも多い
- 「絵で食べていく」のは、実は極めて難しい
これは、美大関係者の間では常識である。
もちろん、才能と覚悟がある子は、美大に行くべきだ。
しかし、
「絵やデザインは好き」
「でも、安定した仕事に就きたい」
「家計的にも、私立美大は厳しい」
こういう家庭にとって、未来大学は極めて魅力的な選択肢になる。
なぜ未来大学が「美大の代わり」になり得るのか
公立はこだて未来大学では、
- 情報デザインコースがある
- UI/UXデザインを体系的に学べる
- 4年間でプロのデザインスキルが身につく
- 卒業生はGoogle、任天堂、ソニー、楽天などへ就職
つまり、
「デザイン力」を、就職に直結する形で身につけられる
のである。
しかも、
- 公立大学なので学費は4年で約260万円(私立美大の3分の1)
- 数学や情報の基礎も身につくので、エンジニアとしての就職も可能
- デザイナーとしてのキャリアも、エンジニアとしてのキャリアも、両方開かれる
これは、進路の保険としても極めて優秀である。
現代のデザイナーは「コードが書けるデザイナー」
少し業界の話をしたい。
2025年現在、デザイン業界では、
「コードが書けるデザイナー」
「デザインがわかるエンジニア」
の需要が爆発的に増えている。
純粋な「絵が描けるだけのデザイナー」は、AIに仕事を奪われ始めている。 純粋な「コードが書けるだけのエンジニア」も、上流工程から外されつつある。
生き残るのは、
- ユーザー視点でデザインができる
- かつ、それを動くプロダクトとして実装できる
- そして、ビジネスとしての価値を理解している
こういった「ハイブリッド人材」だ。
公立はこだて未来大学は、
まさにこのハイブリッド人材を育てるために設計された大学
である。
「美大に行きたい」という子の親御さんへ。
もし、その子に少しでも「コンピュータやアプリ、Webサイトに興味がある」素養があるなら、
未来大学は、芸術の道を諦めずに、しかも就職の不安を解消できる、
第三の選択肢
として、真剣に検討する価値がある。
結びに
普通の外側に、本物がある
赤穂の高校生にとって、
北海道函館市は、ほぼ「未知の領域」だ。
しかし、その未知の領域に、
日本でも稀有な、
IT×デザイン教育の名門が存在している。
「赤穂から函館へ」
そんな進路を選ぶ高校生が、
もし1人でも現れたなら、
その子の人生は、
間違いなく劇的に変わる。
そして、
その子が10年後、
GoogleやAppleや任天堂で、世界を変えるシステムを作っているかもしれない。
高校生が持っている知識、
集めることの出来る情報、
経験してきた社会は
申し訳ないがたかが知れている。
私が知りうることも知れている。
故に、魅力を語ることも難しい。
少ない情報で「良い」「悪い」を判断せざるを得ない側面もある。
だから今日、
誰も第一志望にしない大学について、
3万字を超える文字を費やして書いた。
このシリーズを読んでくれている、
高い保護者の方、
そして高校生の皆さんへ。
偏差値表の外側に、
本物の名門は、
確かに存在している。
そのひとつが、北の街、函館にある。
公立はこだて未来大学。
覚えておいて損はない、
日本でも貴重な大学である。
第1志望にしてください
とは
私の方から提案はしません。
私が密かに期待している事
偏差値にあらわれない名門大学の存在を知ることで、
各高校が公表している
大学進学実績の見方が変わることも
期待しています。






