英語がツマラナイ。
英語が全く分からない。
そんな子達が増えてきました。
ツマラナイと思っている子達を楽しくさせるには、2段階あると思っています。
2つの段階を切り分けないと楽しくなる気は致しません。
授業で、ロンドン橋が落ちた
中学生向けの英語の会話文を読んでいたときのことです。
とある中学生が be falling down の訳について四苦八苦していました。
日本の女の子が、アメリカから来た友達とロンドンの話をしている場面も登場する一文でした。
友達が「タワーブリッジって知ってる?」と聞くと、女の子は「それってロンドン橋のこと?」と聞き返して、とある歌を口ずさみます。
London Bridge is falling down
すると友達が、「違うよ、あれは別の橋だよ」と訂正する。
なんてことのない会話ですが、深堀は出来ます。
London Bridge is falling down,
Falling down, falling down,
London Bridge is falling down,
My fair lady.
ウィキペディア
ロンドン橋が落ちていく、
落ちていく、落ちていく、
ロンドン橋が落ちていく、
私の美しいご婦人よ。
直訳
Build it up with iron bars,
Iron bars, iron bars,
Build it up with iron bars,
My fair lady.
ウィキペディア
鉄の棒でそれを建て直せ、
鉄の棒で、鉄の棒で、
鉄の棒でそれを建て直せ、
私の美しいご婦人よ。
直訳
「英文解釈」には2つの意味がある
「英文解釈」という言葉。
学校でも塾でも、当たり前のように使われています。
でも実は、この言葉には2つの意味が混ざっているんです。
「長文読解」という言葉も同じです。
だからここでは、英文が「分かる」ということを、2つの段階に分けてみます。
1つ目は、文法と構文を見抜いて、直訳すること。
どれが主語で、どれが動詞か。
どの言葉が、どこを説明しているか。
文の骨組みを正確につかんで、「形のうえで何と書いてあるか」を日本語にする。
2つ目は、文脈や背景をふまえて、「何を言っているのか」をつかむこと。
直訳した内容を、前後の流れや、背景の知識と照らし合わせる。
そして、「結局どういうことか」を理解する。
1つ目ができなければ、そもそも何が書いてあるのか分かりません。でも、1つ目ができても、それだけでは正しい意味にたどり着けないことがある。
その見本みたいな一文が、London Bridge is falling down. だったんです。
まずは、直訳してみる
主語は London Bridge。
動詞は is falling。進行形です。
直訳すると、「ロンドン橋が落ちていく」。
文法の面では、これで正解です。はい、おしまい。
解釈してみる
まず、これは女の子が口ずさんだ童謡の一節です。
「今まさにロンドン橋が崩れています!」と報告しているわけではありません。
「その橋の歌なら知ってるよ」と言いたくて、歌い出しを引用しているだけ。
誰が、どんな場面で言った文なのか。
ここでもう、2つ目の意味の読みが必要になっています。
女の子の「取り違え」
女の子はタワーブリッジとロンドン橋を取り違えています。
タワーブリッジは、テムズ川にかかるはね橋。
船が来ると、橋の真ん中が上に跳ね上がる橋です。
ロンドン橋は、それとは別の橋です。
会話文の中でも、友達がそう訂正しています。
女の子が勘違いに気が付かないまま読めば?
ロンドン橋=はね橋だとしたら、falling down は「崩れ落ちる」ではなく、「上がっていた橋が下りてくる」とも読めてしまいます。
事故なのか。
それとも、いつもの日常の風景なのか。
文法をいくら分析しても、この答えは出てきません。
down があるか、ないか
ここで、falling down の down に注目してみます。
fall だけなら、意味は「落ちる」。
ただ、この言葉、守備範囲がとても広いんです。
・Leaves fall.(葉が落ちる)
・Prices fall.(値段が下がる)
・Rain falls.(雨が降る)
だから London Bridge is falling. だけだと、「何かが落ちつつある」のは分かっても、どう落ちるのかがぼんやりしています。
down がつくと、「下へ、地面まで」という方向がはっきりします。
down のような副詞は、「どこへ」「どのように」という、動きのようすを詳しく説明する言葉です。
そして、立っていたもの、建っていたものが「倒れる」「崩れ落ちる」という意味が強くなる。
・He fell down.(彼は転んだ・倒れた)
・The old house fell down.(古い家が崩れ落ちた)
ここで、会話文に戻ります。
タワーブリッジの動きを説明するときには、move up という言葉が使われていました。
もし、はね橋が下りてくる様子を言うなら、英語では come down や be lowered(下ろされる)を使うのが自然です。
fall down とは、まず言いません。
fall には、「支えを失って、勝手に落ちる」という感じがあるからです。
仕掛けを動かして橋を下ろす場面には、合わないんですね。
つまり、down まで含めた falling down という言葉の選び方そのものが、すでに「崩れ落ちる」を指さしている。
単語一つひとつを丁寧に押さえるのも、1つ目の英文解釈の大事な仕事です。
ちなみに、この童謡の古い歌詞には London Bridge is broken down. という形もあります。
broken down は「もう壊れてしまった」状態。
falling down は「今まさに崩れ落ちつつある」様子。
同じ歌なのに、見えてくる場面がちょっと違うんです。
歌の続きを知っていれば?
そして、最後の決め手。
この歌は、このあと「Build it up with ~(~で建て直せ)」と続きます。上で引用した版では iron bars(鉄の棒)、ほかの版では wood and clay(木と粘土)など、建て直す材料は版によっていろいろです。
建て直す、ということは。
そう、橋は崩れたんです。
だから falling down は「下りてくる」ではなく、「崩れ落ちる」。
ここでようやく、意味が決まります。
もう一歩、歴史に踏み込んでみる
ロンドン橋の歴史
確かに、今のロンドン橋は、はね橋ではありません。
ところが、この歌で有名な昔のロンドン橋(中世に造られ、1831年まで使われた石の橋)には、木製のはね橋の部分が一か所ありました。
この部分は18世紀に石のアーチに造り替えられましたが、それまでの長い間、昔のロンドン橋は「一部がはね橋」だったんです。
え、じゃあ「下りてくる」もアリなの?
……と一瞬ゆらぎますが、歌の続きは「建て直せ」。
やっぱり崩れています。
さらに、この歌の由来には、いくつかの説があります。
よく知られているのが、1014年ごろ、のちにノルウェーの王となるオーラヴが、船で橋の下に入り、橋脚に綱をかけて引き倒したという言い伝え。
いわゆる「ヴァイキング説」です。
そもそも、ヴァイキングって?
ヴァイキングとは、8世紀の終わりから11世紀ごろにかけて、北ヨーロッパのスカンディナヴィア(今のノルウェー、デンマーク、スウェーデンのあたり)から、船で各地へ出ていった人々のことです。
村や町を襲うこともあれば、商売をしたり、よその土地に移り住んだりもしました。
イングランドにも、たびたびやって来ています。
11世紀の初めには、デンマークの王がイングランドを攻め取り、ロンドンもデンマーク勢の手にありました。
言い伝えでは、イングランドの王が、オーラヴの力を借りてロンドンを取り戻そうとした、とされています。
つまり、橋を守っていたのもヴァイキング。
橋を引き倒したのもヴァイキング。
なかなかややこしい構図です。
北欧の物語に残っている歌は、このとき「オーラヴが勝った」とたたえるものです。
ヴァイキング説をとるなら、歌のもとは橋を壊した側の勝利の歌ということになります。
ただし、この出来事が本当にあったのかを疑う歴史家もいます。
同じような橋くぐりの遊び歌はヨーロッパ各地にあり、それがイギリスで一番有名な橋に当てはめられたという説。
古い橋が傷んでいく様子を歌ったという見方。
歌の由来は、はっきりとは分かっていないんです。
ちなみに、日本で食べ放題を「バイキング」と呼ぶのは、帝国ホテルが北欧風の食べ放題料理を始めるとき、当時の映画『バイキング』にちなんで名付けたのが始まりだと言われています🍽️
ロンドン橋から、ホテルのビュッフェまで。英文一つで、ずいぶん遠くまで来ました(笑)
ここからは、少し遊びです
もし、この歌を「何度壊れても、建て直されてきた橋」の歌として読むなら。
そこには、自分たちの街を守り続けてきたロンドンの人々の、悲しみと力強さが重なって見えてきます。
ミュージカル『レ・ミゼラブル』の歌にも通じるような響き。
……なんて、ここまで来ると、もう英文解釈ではなく、ただの深読みです笑
妄想で読んで現代文と英語で失点するパターンです。
2つ目の英文解釈も、本文や事実という根拠から離れてしまえば、ただの想像になってしまいます。
不定詞も解釈の能力が求めらえる
実は、授業でいちばん生徒がつまずく不定詞も同じことが原因です。
to+動詞の原形。
形はたった一つなのに、働き(形容詞的用法、副詞的用法、名詞的用法)がいくつもあります。
・I went to the store to buy milk.
(牛乳を買うために店に行った)
・I was surprised to hear the news.
(その知らせを聞いて驚いた)
・He grew up to be a doctor.
(成長して医者になった)
・I have a lot of homework to do.
(やるべき宿題がたくさんある)
・I like to read books.
(本を読むことが好きだ)
形を見ただけでは、どれなのか区別がつきません。
もっとも、文法である程度は絞り込めます。
不定詞が主語や目的語の場所にあるならば、名詞でなければなりません。
名詞のすぐ後ろなら、その名詞を説明していること(形容詞)が多い。
surprised や glad のような気持ちを表す言葉の後ろなら、その気持ちの原因であること(副詞)が多い。
それでも、決めきれない文があります。
I need a friend to help me.
「助けてくれる友達が必要だ」なのか。
「助けてもらうために、友達が必要だ」なのか。
最後に一つに決めるのは、前後の流れです。
文法で候補をしぼり、文脈で一つに決める。
不定詞は、1つ目の英文解釈と2つ目の英文解釈が出会う場所なんです。
ロンドン橋が落ちるのか、下りてくるのか。それを決めたのと同じ力が、ここでも試されています。
生徒に求めていること
さて。
ここまで書いておいてなんですが。
「英文解釈」という言葉そのものが、そもそも多義的なんです。
だから、生徒が学校の授業のどこでつまずいているのかも、見えにくいのです。
どこまで伝えるべきか。
相手を見て判断するしかありません。
そのうえで、授業で生徒に求めているのは、1つ目の英文解釈です。
どれが主語で、どれが動詞か。
どの言葉が、どこを説明しているか。
文の骨組みを正確につかんで、きちんと直訳できること。
2つ目の英文解釈は、英語の文法が整っている子でないと、ついていけません。
もちろん、2つ目に向いている子もいます。
本をたくさん読んでいる子。歴史や地理が好きな子。映画やニュースから、自然と世界の広さを知っている子。
そういう子は、文法が固まったとたんに、2つ目の読みがぐんと伸びるし、センスだけで読めてしまうこともあります。
でも、多くの子は、まだそこまでの教養を持っていません。
中学生が、中世のロンドン橋やヴァイキングを知らないのは、当たり前です。
知らない子に2つ目の解釈を求めても、「英語はよく分からない」という気持ちだけが残ります。
だからこそ、まずは誰でも身につけられる1つ目、文法から固めるんです。
古文も現代文も英語も、お互いにつながっています。
でも、国語でも英語でも、文法・構文・品詞の理解がある程度そろっていなければ、解釈もくそもないんです。
入試も、教科書も、揺れている
共通テストや高校入試は、契約書や、共通テスト前半に出てくるような「実用的な文章」の方向に進んでいます。
一方で、大学の2次試験の英語では、文学的な解釈も求められます。
国語では、高校の「論理国語」と「文学国語」を分けた結果、文学に触れる機会が減ったとして、科目を組み直す案が文部科学省から出ています。
論理国語、非難轟々でしたからね(笑)
本来は、小学校から中学校で文法を固めて、高校で2つ目の解釈を深めていく。これが理想の順番だと思います。
音楽や理科や社会を学び教養が深まった時、高校での解釈が活きてきます。
ただ、教科書はそうなっていませんし、特に中学の授業では、文法の説明より、英語を使うことが優先されがちです。
解釈に突っ走る先生
2つ目の話を突き詰めすぎると、高校の古文や英語でありがちな「暴走」になります(笑)
いませんでしたか?
文法も構造もあやふやなまま、解釈に突っ走る先生。
ハマる子ははまります。
僕は、けっこう好きなんです。
でも、文法があやふやな生徒は、置いていかれるだけです。
または、教養が無い場合、何を語られているのか分かりません。
まずは、文法を大事にしなさい
そもそも、「文法はツマラナイもの」という空気が、すべての出発点になっているのだと思っています。
だから、「活きている英語」「自然な英語」ばかりがもてはやされるのでしょう。
英文を、本当の意味で読めるかどうか。
確かに、それは、文法の力と同じくらい、その英文の向こう側にある世界をどれだけ知っているかにかかっています。
それをマニアックな知識というのか、一般常識というのか分かりませんが、、、教養がなければ英文解釈は出来ません。
つまり、「分かる」とは奥深い。
でも、その奥深さにたどり着く入り口は、いつも同じです。
主語と動詞。品詞。文の骨組み。
英語を楽しむための1段目は、ここからです。
だから、キミたち。
まずは、文法を大事にしなさい。
