所感
例年通りの形式。選択肢が例年より選びやすかったため、平均点は大幅に上昇した。
ただし、大問1の問三b(グラフ読み取り)の正答率は47.2%、大問5の問二(品詞)はわずか20.5%と、例年同様、「焦って読み飛ばすと落とす問題」が散りばめられている。
兵庫県の国語は、公立高校入試の中では比較的文章量が多いことが特徴で、試験時間が足りずに問題をじっくり考えることなく解答してしまった中学生も多かったのではないだろうか。
毎年、大問1の【会話文】+【連絡】+【資料1〜3】の総合問題と、大問5の評論文では、「複数の資料を行き来する力」「抽象的な内容を具体例で言い換える力」が問われる。
評論文の内容は、大人向け新書レベルの内容を扱うことが多く、今年の大問5「センスの哲学」(千葉雅也)も内容自体は難しいが、選択肢はやさしめなので、「選択肢のどこが本文と食い違っているか」を一つひとつ確認しながら解くクセをつけておけば、見た目ほど怖い問題ではない。
過去問で練習する際には、選択肢問題なら「不正解の根拠」を、また本文や問題文のどこを読み落としたから正解にたどり着けなかったのかを一問ごとに振り返ることで、着実に得点力は身についていく。
解説
大問1 校内発表会の会話文と資料
大問1が苦手な場合は、視点移動が多く、理科と社会も苦手なのではないだろうか。
令和6年度(2024年度)入試よりも、かなり解きやすい印象。
本文要約
地域のスーパーマーケットでの活動(トライやる・ウィーク)を校内で発表するための資料と、それについての生徒四人による会話文からの出題。
設問は全7問。
記号選択問題が5問、漢字の読みが1問、グラフの読み取りが1問。
会話文の流れや内容から、【連絡】で相談し忘れた内容を選ぶ問題も出題された。「指示された条件をきちんと拾えているか」がポイント。
問1 語句の意味 正解「エ」
「バラエティーに富む」の意味を問う問題。
「バラエティー」は「様々な種類があること」「変化があること」の意味。「バラエティーに富む」で種類が非常に多くあることを意味する。
「個々」は「ひとつ、ひとつ」や「ひとり、ひとり」のように個別を意味する。個別であることを種類が多いととらえないように注意。
文字の意味から考えるようにする。
問2 漢字の読み 正解「しゅん」
「旬」は「野菜・果物・魚などの味が最もよい時期」の意味。
会話文の冒頭で生徒Dが「『今が旬です』というラベルが目に飛び込んでくる」と発言している。料理や食材の文脈なので、迷わず「しゅん」と読みたい。
ちなみに「旬」を「じゅん」と読むと「十日間」の意味(上旬・中旬・下旬の「旬」)。1つの漢字に複数の読みがある場合は、文脈から判断する。
問3 資料1の読み取り 正解 a「ア(50%)」 b「イ」
a 【資料1】の〔全体の割合〕から計算
「兵庫県内の郷土料理を知っている人の割合」は、
・「知っていて、作れるものがある」(24.4%)
・「知っているが、作れない」(25.0%)
を合わせた数字である。
これは算数の問題のように思える。
24.4 + 25.0 = 49.3 → 約50%
よって正解はア「50%」
b 【資料1】の〔知っている人の年代別内訳〕から判断
ア 一度減って、また増えているので「減少を続ける」ではない。→×
イ 40歳代以下では、すべての年代で「作れない」人の割合が「作れる」人より多い。→○
ウ 80歳以上では、「作れる」人が16.9%で20%を下回っている。→×(20%を上回っているではない)
エ 「作れない」人の割合は、50歳代より60歳代や70歳代で減少している。→×(増加ではない)
【グラフや図の読み取りのコツ】
○示された項目を正確に読み取る。また、複数の項目を足して判断する場合もある(問三a)
○「減少を続ける」「増加を続ける」では、例外がないかをチェックする(問三b)
○割合なのか実数(例…人、件など)なのか、単位にも注意する
問4 【資料2】の内容 正解「ウ」
各選択肢を【資料2】と照らし合わせる。
ア 19日の献立を工夫しているのは、明石市だけである。
→他の自治体も独自の取り組みをしている
→×
イ 地域産果物を毎月使用している地域はない。
→×
ウ 地域産の米を、三田市、明石市、南あわじ市の三地域が使用している。
→○
エ 地域産魚介類を使用している地域はあるが、毎月かどうかはわからない。
→×
「すべての」「毎月」「だけ」などの限定表現には特に注意。資料に書かれていないことを勝手に補わない練習をしておこう。
問5 【資料3】の内容 正解「ア」
【資料3】には、
・学校給食に地場産物を活用することで、子どもの「地域の食や食文化等」への理解が深まる
・食料の生産、流通に関わる人々への感謝の気持ちを抱くことができる
・地場産物の活用は、二酸化炭素排出量の抑制、環境負荷の低減に寄与する
・SDGsの観点から有効
と書かれている。
ア 地場産物の活用が「子どもたち」と「地球環境」に与える影響が【資料3】で説明されている。
→○
イ 「流通事情の改善」は書かれているが、それが食文化の変容につながったという内容は書かれていない。
→×
ウ 「自然の恵みへの感謝」は書かれていない。
→×
エ 学校給食が「健康増進」に関わることは書かれていない。
→×
問6 発表の構成 正解「エ」
これは会話文の流れを丁寧に追う問題。
傍線部⑥の生徒Bの発言を受けて、
・生徒D「活動の具体的な話から始めようよ」
・生徒C「発表の最後には……お礼を言いたいよ」
・生徒D「お客さんからのことばについて『活動のすぐあとの方がいいと思うんだけど』」
・生徒B「そのあとで集めた資料の説明をしよう」
つまり、「活動内容」→「お客さんのことば」→「資料の説明」→「お礼」の順となるので、エが正解である。
問7 【連絡】で相談し忘れた内容 正解「イ」
【連絡】の内容と、【会話文】の生徒四人の発言内容を照らし合わせて判断する。
ア スライドの「活動中の写真」については最後に相談している。
→×
イ 活動内容の「調査結果」について、自分たちの店の経験や店員の立場から見た感想は述べているが、「自分の生活に結びつけた考察・提案」については特に発言なく相談していない。
→○
ウ 「事業所に対する活動後の印象」は【連絡】の「活動内容とその感想」にあたるが、会話文の冒頭での「忙しい五日間だった」や、傍線部⑥の直前での「店員の立場からスーパーを見ると……気づけたよ」というように、スーパーでの活動後の印象を発言していることから、相談している。
→×
エ 【連絡】では、「事業所の人からかけてもらったことば」については触れていない。
→×
正答率47.2%と低めの問題。
「ア」を選んで間違えた子が多かったのではないだろうか?
「写真はどうしようか」
「写真は選んでおくから、また確認してね」
「これは「相談」なのか?」と納得できなかったとしても、明らかに「イ」が正解だと思って欲しい。絶対に触れていない。
大問2 漢詩「商山早行」温庭筠(『唐詩選』)
旅先での風景から故郷の長安の名所を思い出している五言律詩。
解説は詳しく書きますが、
兵庫県の漢詩問題は、「漢字一つ一つの意味を暗記している前提」では作られていません。 あくまで「与えられた解説文・書き下し文・現代語訳のヒントから、本文の構造と意味を読み取る力」を問うています。
普段の学習から、漢文を読む際に、知ってる知識を総動員して、無理やり読んでから現代語訳を読むと、効果的です。
授業や問題集の漢文解説が活きたものになります。
本文の現代語訳
「商山の早行」
→ しょうざん の そうこう
②晨(あした)に起きて征鐸(せいたく)を動かす
→ あした に おきて せいたく を うごかす
→ 夜明けに起きて、征鐸を鳴らして出発したが、
※征鐸
本文(注)参照
出発の時にならす鈴のようなもの
③客行故郷を悲しむ
→ かくこう こきょう を かなしむ
→旅をする私は、故郷長安を思い悲しくなる。
客行という単語は、(注)には何も書かれていません。一方で、現代日本語でも使われていません。さらに、中学の教科書に頻出だというわけでもありません。
しかし、【解説文】を読むと作者が旅をする物語であることは理解できます。
「客」=「旅人(=家を離れている人)」、「行」=「行く・旅する」と分けて考えれば、「旅をすること」だと推測できますが、無理がありそうですね笑。
漢字を一字ずつ訓読みで読んで意味を考える
——これが漢文・漢詩を読むときの基本的な姿勢です。
④鶏声茅店の月
→ けいせい ぼうてん の つき
→(粗末な)茅ぶきの家の上には月がまだ残っていて、鶏の声が聞こえる。
※茅ぶき
茅(かや) という草で屋根を葺(ふ)いた(=覆った)、昔の素朴な家のこと。一般常識です。
⑤人跡板橋の霜
→ じんせき はんきょう の しも
→ 板橋には霜がおりて、そこに人の足跡がついている。
⑥槲葉山路に落ち
→ こくよう さんろ に おち
→柏の葉が山路に落ちていて、
⑦枳花駅墻に明らかなり
→ きか えきしょう に あきらかなり
→からたちの花が宿場の垣根にきれいに咲いている。
⑧因りて思ふ杜陵の夢
→ よりて おもう とりょう の ゆめ
→(この旅の朝景色を眺めながら、)ふと思い出されるのは、昨夜(茅店で)見た、故郷長安(杜陵)の夢のこと。
⑨鳧雁回塘に満つるを
→ ふがん かいとう に みつる を
→鴨や雁などの水鳥が、池のほとりにたくさん群れている風景だ。
問1 返り点 完答(正答率86.0%)
○一字返って読むときは「レ点」
○二字以上返って読むときは「一・二点」
兵庫県公立高校入試の漢文では返り点が頻出。
書き下し文と漢文を見比べて、漢字に番号をつける練習をしておきましょう。苦手な人はかなり演習を積みましょう。高校古文で中学レベルの返り点で混乱する場合は、かなり苦しくなります。※漢文の語順は、英語の語順とほぼ同じです。
問2 a「対句」 b「視」 c「ウ」
a 空欄補充 正解「対句」
「よく学び、よく遊び」のように、対応する語句を並べて、文章にリズムを生み出す表現方法。
漢詩では、五言律詩・七言律詩で第三句と第四句、第五句と第六句が必ず対句になる。
b 空欄補充 正解「視」
「鶏声(けいせい)」=「鶏の声」は「聴覚」に訴えるものであり、それに対応する「人跡」=「人の跡(足跡)」はそれを霜の上に見ているので、「視覚」に訴えるものである。
よって、空欄bには「視」が入る。
「重箱読み」など熟語の成り立ちで学んだ知識は、こういうところで活かして欲しい。完璧でなくても類推は可能です。類推するためには、「漢字そのものの意味」「訓読み」に拘って、普段の漢字学習を進めてください。
c 作者の心情 正解「ウ」
おそらくこの問題は、本来、難しい問題のはず。しかし、多くの中学生が杜甫や孟浩然を思い出し、なんとなく「あるある」で正解してしまったと拝察。
第七句と第八句は、【解説文】では「作者の内面が表現されている」とある。第七句「因りて思ふ杜陵の夢」の「夢」がポイント。これは「夢のように懐かしい思い出」ではなく、「昨夜、茅店で寝ているときに見た、故郷長安(杜陵)の夢」のこと。
そして第八句「鳧雁回塘に満つる」は、目の前の景色ではなく、その夢の中で見た故郷の景色を描いている。
つまり、
→朝起きて歩いていた。
→いろんな風景をみた。
→だから(因りて)思いめぐらせている。
→(夢でみた)鴨や雁などの水鳥が、池のほとりにたくさん群れている風景を。
というような意味。
ア 「再び長安で暮らすことを期待している」という内面は読み取れない。
→×
イ 「長安で悲しい思いをした」こと、「長安に戻る決意を固めている」ことは読み取れない。
→×
ウ 「商山あたりの景色」がきっかけで、「長安を懐かしく思っている」。
→○
エ 「孤独感を乗り越え」るという内容は描写されていない。
→×
句の数や一句の字数によって次のように分類される。
・絶句…四句の詩
・律詩…八句の詩
・五言詩…一句が五字の詩
・七言詩…一句が七字の詩
・五言絶句…五字で四句
・七言絶句…七字で四句
・五言律詩…五字で八句
・七言律詩…七字で八句
○絶句は「起・承・転・結」の構成になっている。
○律詩は第三句と第四句、第五句と第六句が必ず対句になる。
○漢詩には、中国語で同じ響きをもつ字が決まった句末に用いられる「押韻」がある。
・五言詩は偶数句末、七言詩は第一句と偶数句末に押韻。
大問3 古文「身の鏡」江島為信
文章は、新田義貞が自分の命令のため部下が食料に困窮したことに気づいて、命令を破った部下を許したという話。
歴史的仮名遣いや主語に関する問いは頻出。
①登場人物を丁寧に。
聞きなれない役職や人名だから、A、B、Cのように整理しても良い。とにかく登場人物を把握することが現代小説より難しいので、意識すること。
②導入部分は必ず読みましょう。
導入部分は、本文を読んだだけでは、絶対に正解できない補足として書いてある出題者の優しさとメッセージです。導入部分こそ丁寧に。
③主語/述語意識
述語を見つけるたびに、「誰が?」「何が?」と主語を補完するクセをつけて演習してください。
その癖が、現代文の力のみならず、高校古文で役に立ちます。
述語=どうする、どんなだ、何だ。
専門的な述語の定義は、不要です。まずは、感覚的に理解しましょう。主語の理解は、述語の理解からです。
④音読必須
まずは、古文のリズムになれましょう。定期テストや課題テストを上手に利用して、音読しましょう。ただし、現代語訳や本文の解説が描かれていない文章を音読しても効果は限定的です。
⑤無理やり読む
中学古文で、覚えるべき「古文単語」はありません。
古文単語は、以下のように分類することが出来ます。
・現代と同じ意味
・現代と違う意味
・現代にはない単語
中学古文で(注)が書かかれていない時があります。基本的には、現代と同じ(似たような)意味で使われている単語だと思ってください。古文が読めないということは、「現代語を知らない」ということだと思っていただいて構いません。「現代語」というと論争が巻き起こりますが、、、。
まずは、現代語っぽい意味に置き換える訓練をしましょう。
その習慣が付いた後、高校で古文単語を暗記しましょ。
本文の現代語訳
述語を見つけるのも難しいので、述語に色をつけてみました。誰が?何が?何を?と質問を自分に問いかけながら読みましょう。
①ある時、義貞大勢を率ゐ出陣せられし時、制札を立てらるるその趣は、
→ある時、新田義貞が多くの軍勢を率いて出陣なさった時、義貞は(部下に命じて)制札を立てさせた。その制札の趣旨は(次のようなものだった)、
②「諸士下々に至るまでも、作を刈り取り、人家に押し入り、乱妨狼藉して、百姓等をなやます者あらば、すみやかに刑科に行ふべし」と、書立置かれけるに、
→「義貞軍の武士たちは、下っ端の者にいたるまで、(義貞軍の中で)百姓の作物を刈り取ったり、人家に押し入ったり、荒々しい行動で暴れて、百姓たちを悩ます者がいたならば、義貞はその者にすぐに刑罰を与えるぞ」というもので、義貞はこの内容を書いて立て置かせたところ、
③かの小山田太郎、青麦を刈りとり、我が乗り馬に付けて陣屋に帰りしを、時の奉行すなはちこの旨言上す。
→(ところが、)あの(義貞の家来である)小山田太郎が、(百姓の畑から)青麦を刈り取って、小山田の乗っていた馬に付けて、小山田の陣屋に帰った。そのことを、時の奉行が(義貞の命令違反である事実を)すぐに義貞に申し上げた。
④義貞つくづくと思案して、「この小山田おほして法度を犯すべき人にあらず。もし兵糧にや詰まりたるらん。陣屋を見よ」とて見せられしに、武具、馬具はさはやかにして兵糧は一粒もなし。
→(報告を聞いた)義貞は、(すぐに罰するのではなく)よくよく思いをめぐらして、(義貞は)「(私の家来である)この小山田は、わざわざ(私が立てた)法を破るような人ではないはずだ。もしかしたら小山田は(自分の)陣屋の中で食料に困っているのではないか。(誰か)小山田の陣屋を見てこい」と(部下に)命じて(部下に小山田の陣屋を)見に行かせたところ、(報告によれば、小山田の陣屋には)武具や馬具はきれいに揃っていたが、(その一方で)食料は一粒もなかった。
⑤義貞この旨を聞こしめし、大きに赤面して、郎従のつかれは将の恥なりとて、小山田には八木、麦の本主にも引物たまはりしとなり。
→義貞は、(部下から「小山田の陣屋に食料がなかった」という)この状況をお聞きになり、(義貞は)たいへん赤面して、「家来である小山田の困窮は大将である自分の恥である」と言って、義貞は小山田には米を、(小山田に青麦を刈り取られた)麦の持ち主(百姓)にも引き出物を(義貞自ら)お授けになったということだ。
⑥この情けの程を感じて、湊川にて命に替はりしとかや。
→(その後、米と引き出物をもらった)小山田は、義貞の温情(=慈悲深く許してくれて、しかも米まで与えてくれたこと)を深く感じて、(のちの)湊川の戦いで、義貞の身代わりとなって討たれたということだ。
問1 現代仮名遣い 正解「すなわち」
歴史的仮名遣いで、語頭と助詞以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、現代仮名遣いでは「わ・い・う・え・お」と表記する。
よって、「すなはち」→「すなわち」と書く。
○ゐ・ゑ → い・え
(例:ゐる → いる、こゑ → こえ)
○助詞以外の「を」 → 「お」
(例:をとこ → おとこ)
○ぢ・づ → じ・ず
(例:もみぢ → もみじ、みづ → みず)
○くわ・ぐわ → か・が
(例:くわじ(火事)→ かじ、ぐわん(願)→ がん)
○む → ん
(例:行かむ → 行かん)
○au・iu・eu → ou・yuu・you
(例:やうやく → ようやく〔au→ou〕、うつくしう → うつくしゅう〔iu→yuu〕、けふ(今日)→ きょう〔eu→you〕)
——————
現代仮名遣いと歴的仮名遣いは、ルールを暗記しても良いのですが、普段から古文を音読していくことをお勧めいたします。
いきなり細かいルールから学ぶと嫌になります。
感覚的にそういうものだと受け入れた後に、ルールを学びましょう。
中学古文のテーマはそこです。
故に、入試問題も文法や単語が分からなくても正解できる問題が多いのです。
問2 傍線部①の主語 正解「イ 小山田」
この文章の登場人物は、「義貞」「小山田」「奉行」「本主(百姓)」。
傍線部①の直前で、陣屋に自分の馬から(青麦を載せて)帰ったのは、本主(百姓)の青麦を刈り取った人物であり、主語は「小山田」である。「奉行」はそれを「義貞」に報告した。
現代の日本語であっても主語は省略されがちですが、古文ではさらに主語が省略されることが多くあります。それは、文章自体が内輪の会話で、友達同士のLINEにすぎないからです。とにかく「述語」が登場するたびに「誰が?」「何が?」と自分で補っていく習慣をつけてください。
特に古文では、行動の主語が「役職名」だったり、敬語の使い分けから判断したりすることもありますが、敬語の判別などは高校生になってからで間に合います。「どうした」を見つけてから「誰が?」と頭の中で問いかけることが重要は中学生のうちに習慣/クセを完成させてください。
問3 義貞の心情 正解「ウ」
傍線部までの要約をしてみましょう。
義貞は、「百姓の作物を刈り取るなどした者にはすぐに刑罰を与える」と制札を立てたにもかかわらず、小山田がそれを破ったと聞いたが、すぐに罰するのではなく思案している。
そこからさらに「小山田はあえて法を破る人ではない」と言っているので、義貞は、小山田が制札の命令に反したが、(それなりの事情があったのではないか)と小山田を信用しようとしている。
ア 「改心を願っている」が×。
「法度を犯すべき人にあらず」という義貞の言葉と合わない。
→×
イ 「罰しようとしている」が×。
義貞は「小山田はあえて法を破る人ではない」と思っている。
→×
ウ 「法を破る者ではないはずだ」と義貞は思っていることと合う。
→○
エ 「罰を恐れる人間ではないはずだ」が×。
選択肢の違いを把握し、必ず傍線をつけて「×」など、文のどこが違うのか後で見たときに分かるようにしましょう。
選択肢の述語同士を比べる。
選択肢の主語同士を比べる。
選択肢の目的語同士を比べる。
試験本番は「雰囲気」で正解してもよいのだが、練習中は「雰囲気」による正解を実力だと勘違いするのは避けておきましょう。
数学同様に途中式を書く意識です。
問4 義貞の心情 正解「イ」 ※正答率43.4%
いつの時代も戦争が起こると兵士が攻め入った先で乱暴を行うのは常識です。だから、義貞は「百姓に迷惑をかけたら許さない」と言ったわけです。「兵糧に詰まりたるや」の解釈がポイントでした。「まさか小山田は兵糧(食べ物)に困っているのでは?」といった意味。
小山田は何も考えずに法を破る人ではない。
→もしかして兵糧に困って仕方なく百姓のコメを奪っていったのでは?疑った。
→調べさせたら、小山田の倉庫には食料が何もなかった。
→家来が食べ物に困るって大将として恥ずかしい(赤面)
正解は「イ」
正答率が低いのも頷ける問題でした。
問5 文章全体の主旨 正解「エ」
ア 「規則を改める」が合わない。
→×
イ 「悔いている」も「一層の働きを期待」も違う。
→×
ウ 「小山田と麦の元の持ち主との間を」義貞が「取り持った」も「罪を償う機会を与えた」も違う。義貞は両方に贈り物をしているだけ。
→×
エ →○
大問4 小説「森と、母と、わたしの一週間」八束澄子
ひっこみ思案な野々歩が、幼稚園にボランティアとして携わり、先生や園児たちの交流を通して様々な気づきを得ていく物語。
選択肢の違いが分かりやすく迷わず正解していきたい。
本文の要約
主人公は、人前に出るのが苦手(引っ込み思案)な中学二年生の野々歩。ボランティアとして「森のようちえん」のお手伝いに入っている。
ある雨の日、園児たちと森から帰る場面。園児のあやめちゃんが、自分よりずっと大きな炊飯器を一人で抱えて運ぼうと悪戦苦闘していた。見かねた野々歩が手を貸そうとすると、先生のゆりっぺがそれを止める。「あやめちゃんが自分から『助けて』と言うのを待っているの」と。
あやめちゃんは何でも一人で抱え込んでしまう子で、ゆりっぺはその子が自分の口で助けを求められるようになる瞬間を、じっと待っているのだった。野々歩はここで、ゆりっぺや森っちが園児一人ひとりをよく見ていることに気づく。
これまで野々歩は、心のどこかで「助けを求めるのは弱さであり、負けだ」と思っていた。しかしゆりっぺの言葉――人は一人では生きていけない、困ったときに「助けて」と言えば、必ず応えてくれる人がいる――を聞くうちに、その考えが少しずつほぐれていく。
やがてあやめちゃんが、ついに自分から「だれか持って」と声をあげた。野々歩とゆりっぺが思わず顔を見合わせて喜んだその瞬間、園児の輝くんが泥をはねながら駆け寄り、さっと手を貸す。「助けて」と言えば誰かが応えてくれる――その光景を目の当たりにして、野々歩の中の何かが確かに変わっていく。
問1 漢字の読み
①背後(はいご)
②炊飯器(すいはんき)
⑧駆けもどって(かけもどって)
問2 表現技法 正解「ア(直喩・明喩)」
「風船が破裂したような泣き声」のように、「ようだ」「みたいだ」などを用いて、あることがらを他のものにたとえる表現技法を「直喩(明喩)」という。
ここでは「泣き声」を「風船の破裂した音」でたとえている。かなりの鳴き声だ。
・直喩(明喩)…「ような」「ようだ」「みたいだ」などを直接使い、たとえるものを直接表す。
(例)彼の声は雷のようにとどろいた。
・隠喩(暗喩)…「ような」「ようだ」などを使わず、たとえるものを明確には示さない。
(例)彼女は我が家のお姫様だ。
・擬人法…人間以外のものを人間に見立てて表現する。
(例)木々が手を振っている。
・反復法…同じ文や句、言葉を繰り返す。
(例)咲いた、咲いた、桜が咲いた。
・倒置法…語順を入れ替える。
(例)美しかった、あの夕焼けは。
・体言止め…文末を名詞(体言)で終わらせる。
(例)真っ赤に燃える夕焼け空。
正答率42.7%と低め。
暗喩と隠喩の違いを苦手としている中学生が多い。意識的に覚えよう。文法や表現技法は夏休みや冬休みを利用して一気に練習することをお勧めします。ちょこちょこやっても定着しづらい分野です。
問3 語句の意味 ③「エ」 ⑨「イ」 正答率42.7%
③「きびすをかえす」 正解「エ 後戻りし」
「きびす」とは、足のかかとの部分。「きびすをかえす」で、引き返すという意味になるので、エ「後戻りし」が正解。
「振り返る」とは、顔や身体を後方に向けること。戻る動作ではないため、イ「振り返り」は誤り。
⑨「いじらしい」 正解「イ けなげだった」
「いじらしい」とは、幼い子どもや力の弱い者が、けな気にがんばる姿を見て、思わず「かわいそう」「応援してあげたい」と胸がしめつけられるような気持ちを表す言葉。
選択肢の「けなげ」も、小さな者・弱い立場の者が、つらい状況でも一生懸命に立ち向かう様子を表す。両者は「弱い者がひたむきにがんばる姿に心を動かされる」という点で重なるので、イ「けなげだった」が正解。
※「いじらしい」は、ただ「かわいい」のではなく、「健気さ+少し切なさ・かわいそうさ」がにじむのがポイント。本文のあやめちゃんが、小さな体で重い炊飯器を必死に運ぼうとする姿は、まさに「いじらしい」場面だといえる。
問4 心情理解 正解「イ」
心情理解とは、状況の整理です。状況を整理しないと心情は分かりません。涙にも悲しい涙、嬉しい涙など様々な心情があります。
野々歩は、あやめちゃんが雨の中、大きな炊飯器を抱えて苦しそうな様子を見て助けに行こうと思った。しかし、それをゆりっぺが引きとめて「放っといて」と言ったので、「(困っている子を見捨てるなんて)ひどくない?」と思っている。
ア 全く違う。ゆりっぺはあやめちゃんが
→×
イ 本文に合っている。
→○
ウ 確かに、野々歩は、ゆりっぺにいらだちを感じているが、理由が違う。「ゆりっぺが園児たちに何の指示もしないこと」が理由ではない。
→×
エ 野々歩は「自分が何もできない」が違う。自分からあやめちゃんを助けるために引き返そうとしている。
→×
問5 心情理解 正解「ア」
「肩を怒らす」とは、肩を高く張って威圧的な態度をとる様子のこと。
まずゆりっぺは、日頃あやめちゃんが一人でキャパオーバーになりがちなのをよくわかっている(傍線 部④の直後)。また、自分の経験から助けが必要なときには、意地を張るのではなく「助けて」と言えば、「必ず助けてくれる人」がいるのを「あやめちゃんにも知ってほしい」と思っている(傍線部④の直後)。だから、あえて威圧的な態度で、自分からは手出しせずに、あやめちゃんの「助けて」という一言を待っている。
ア 正解
イ ゆりっぺは、「助けて」と言えないあやめちゃんに焦りを募らせている描写はないし、いろいろ違う。
→×
ウ まったく違う。
→×
エ 助けにいこうとはしていない。
→×
問6 心情理解 正解「ウ」
傍線部⑦の場面では、あやめちゃんがついに自分の口で助けを求めた。その声を受けて、野々歩とゆりっぺの二人が同時に反応し、思わず顔を見合わせている。
ここまで二人は、何でも一人で抱え込んでしまうあやめちゃんが、自分から「助けて」と言えるようになる瞬間を、じっと辛抱強く待っていた。だからこそ、その願いがかなった今、「ついにできた」という達成感とよろこびを、互いの表情で確かめ合っているのだと読み取れる。
ア 助け合う園児を見て喜んでいるのではない。
→×
イ 二人とも「いち早くあやめちゃんのもとへ駆け寄ろう」とはしていない。
→×
ウ 正解
→○
エ 二人があやめちゃんの「成長を涙ながらに喜んでいる」描写はない。手の甲で鼻をこする描写は、涙を流すしぐさではない。
→×
問7 書き抜き a「負け」 b「助けてくれる」
a
傍線部⑤より後の部分に注目すると、野々歩はもともと、人に助けを求めることを一種の「負け」のように感じていたことがわかる。ボランティアに加わり、ゆりっぺの話を聞くまでは、そうした考えにとらわれていたのである。
この「人に頼ること=負け」という野々歩の意識を表す一字を本文からさがすと、「負け」が該当する。よって抜き出す語は「負け」。
b
野々歩は、ゆりっぺから「人は一人きりでは生きていけず、困ったときに声をあげれば必ず応えてくれる人がいる」という考えを聞かされ、ボランティアに来る前の自分の見方が揺らぎ始めていた。
そして実際に、ふだんは何でも一人でこなそうとするあやめちゃんが、泣きながら助けを求めた。するとその声に応えて、輝くんがすぐさま駆け寄ってきた。この一部始終を見たことで、野々歩は「つらいときに助けを求めれば、ちゃんと応えてくれる人がいる」という事実を、頭ではなく実感として受け止めたのである。
この「助けを求めれば応えてくれる」という内容を表す言葉を本文からさがすと、「助けてくれる」が該当する。よって抜き出す語は「助けてくれる」。
問8 文章理解 正解「エ」
ア 野々歩と「大人との対立」が違う。
→×
イ「いつも声をかける」が合わない。本文では、あえて声をかけていない。
→×
ウ 「希薄な人間関係をみつめなおし」「大人びた人物」などが違う。
→×
エ 正解
→○
大問5 評論「センスの哲学」千葉雅也
Willlbe図書館にもおいてあります。
Willbe生、是非♪
本文の概要
絵画にせよ音楽にせよ、芸術作品には「唯一絶対のこれしかない正解」はない。数えきれない可能性の中から作者の見方・見え方を、一つの形に落としこんだものにすぎない。
だから、いろいろな作品にふれるほど、「これが絶対」という思いこみは溶けていき、ものごとの見方には幅があるという感覚が育つ。
それは「作品の見方」だけにとどまらず、「自分の人生にもいろいろな道がある」という肯定的な構えにもつながっていく。
もっとも、芸術が示すこうした自由さは、社会の倫理や正義のものさしとは別のラインに立っている。
人間はそもそも「どんなふうにでもなりうる」という溢れの中にいる存在であり、だからこそ現実の社会はルールや禁止で枠をはめ、悪へ転がらないようにする。
一方で、芸術の世界では、「ルールや禁止」の枠の外にあるもの(たとえば悪意や逸脱)も表現として受けとめられることがある。
どれほどの悪人を音楽や絵で表現しても「作品」として認められることがある。
続いて筆者は、人間の「動き方」について語る。
動物は目的に向かってまっすぐ最短距離を行く。人間にもその性質はあるが、同時にわざと寄り道し、すぐにゴールへ行かないという、人間ならではのクセも持っている。
この二つの性質は、片方に引かれてはもう片方が引き返すような、いわば「綱引き」のようにせめぎあっている。
そして、目的を達成すること自体を目当てとしない「余暇」の楽しみ方には、大きく二つのパターンがある。
① 遊び・ゲーム型
仮の目標を立て、そこに向かう道のりにあえてハードルや障害物を置く。クリアできるかどうかのドキドキを味わうやり方。
② 芸術型(宙づり型)
ゴールに急がず、途中の「決まりきっていない状態(=宙づり)」にあえてとどまり、そこで生まれる落ち着かなさや揺らぎそのものを味わうやり方。
人はこの二つを行き来したり、どちらかに寄せて生きたりしている。そして、どちらの楽しみにも共通して、不安や不快といった「マイナスの感覚」が必ず混じり込んでいるのである。
つまり、「楽しさ」という体験の中に「否定性(マイナスの要素)」が組みこまれている——筆者はこれを、芸術やエンターテインメントを考えるうえで外せない本質として提示する。
問1 漢字の知識 A「ウ」 B「エ」 C「ア」
同じ音読みでも、訓読みに直すと漢字本来の意味がはっきりして、意味の違いが一目でわかる。「ぞう」「はん」「じょう」と読む漢字の中から正しい選択肢を選ぶには、訓読みでの意味の区別がカギになる。
普段から、訓読みと漢字の意味に拘って漢字の学習をして欲しい。
問題集に取り組んでわかるものではない。
A「想像力」 正解「ウ 映像」
共通する漢字「像」の訓読みと成り立ち
■訓読み:かたち
■意味:すがた・形
「想像」
=心の中に「像(かたち)」を思い浮かべる
「映像」
=映って見える「像(かたち)」
ア 貯蔵(ぞう)
→「蔵」=くら(しまっておく場所)
→×
イ 臓器(ぞう)
→「臓」=はらわた(体の中の器官)
→部首「ニクヅキ」は、体の中の器官をあらわします。
→×
ウ 映像(ぞう)
→「像」=かたち
→○
エ 雑木林(ばやし)
→「林」=はやし(木が集まる場所)
→×
B「反発」 正解「エ 反射」
共通する漢字「反」の訓読みと成り立ち
■訓読み:そる/はねかえす
■意味:逆らう・はねかえる
「反発」
=「反(はねかえす)」+「発(はなつ)」
=はねかえして、おしのける
「反射」
=「反(はねかえす)」+「射(いる)」
=光や音が当たって、もとに返る
※どちらも似た意味の漢字を重ねたつくり方。
ア 半端(はん)
→「半」=なかば(中ほど)
→×
イ 販売(はん)
→「販」=売り買いの「売」に近い意味
→×
ウ 版画(はん)
→「版」=印刷の元になる板
→×
エ 反射(はん)
→「反」=はねかえす
→○
C「条件」 正解「ア 条例」
共通する漢字「条」の訓読みと成り立ち
■訓読み:すじ/えだ
■意味:項目・ものごとのすじ道
「条件」
=「条(項目)」+「件(事柄)」
=個々の決まりごと・前提となる事柄
「条例」
=「条(項目)」+「例(さだめ・きまり)」
=項目ごとに定めたきまり(県条例・市条例など)
※どちらも似た意味の漢字を重ねたつくり方。
ア 条例(じょう)
→「条」=すじ/項目
→○
イ 城塞(じょう)
→「城」=しろ(防御のとりで)
→×
ウ 蒸気(じょう)
→「蒸」=むす(水蒸気)
→×
エ 乗船(じょう)
→「乗」=のる(乗り物にのる)
→×
熟語は、二つの漢字の組み合わせ方によって、おおまかに次の5つに分類できる。
①似た意味を重ねる(同類)
例:道路(道=路)、温暖(温=暖)、反発・反射・条件・条例
②反対の意味を組み合わせる(対義)
例:高低(高⇔低)、明暗(明⇔暗)、賞罰(賞⇔罰)
③上が下を修飾する(修飾)
例:青空(青い→空)、新車(新しい→車)、映像(映る→像)
④上が主語、下が述語(主述)
例:日没(日が→沈む)、頭痛(頭が→痛む)、地震(地が→震える)
⑤下が上の目的になる(目的・補語)
例:登山(山に→登る)、読書(書を→読む)、想像(像を→想う)
「訓読みに直して意味をつかむ」+「成り立ちのパターンに当てはめる」
──この二手を組み合わせれば、初見の熟語でも意味の見当がつくようになる。
この考え方を身につけて置けば、漢文の理解にもつながる。
問2 文・文節 正解「ウ なる」 ※正答率20.5%(最難問)
しばしば」は副詞であり、同じことが何度も繰り返される様子。主に用言を修飾する。
「しばしば」を副詞だと覚えていなくても、あらゆる修飾関係を考える際は、まず、述語と主語をチェックして、述語につながるかどうかを判別して欲しい。
では、この問題で実際にやってみよう。
ステップ1 「しばしば」の位置と文の切れ目を確認する
「しばしば」の直後に読点(、)があることに注目。読点があるということは、ここで意味が一区切りして、「しばしば」が修飾する語は読点より前ではなく、読点の後ろに続く文の中にある、と考えるのが原則。
つまり、「しばしば」が係る相手は、文末に向かって続いていく文の主たる述語のはず、と当たりをつける。
ステップ2 その文の「主語」と「述語」を取り出す
読点の後ろの文を、骨組みだけ取り出してみると、
(主語)→ …結論になる(わけですが)
という構造になっている。
文全体の述語をみつけ、文全体の主語をみつける手順で考えて欲しい。
結論になる→何が?誰が?
つまり、この文の主たる述語は「なる」。
途中に「やようがない」「しかない」のような部分的な言い回しはあるが、それらは文全体を締めくくる述語ではない。
ステップ3 「しばしば」が意味的につながる述語はどれか
「しばしば」=何度も繰り返されるという意味なので、
「しばしば結論になる」=「同じ結論に何度も到達する」
と読むのが、もっとも自然。
一方、選択肢の「なく」「ない」のように単発の否定・断定を表す語に「しばしば」を係らせると、「しばしば〜ない」となって意味がねじれてしまう。
選択肢の中で、副詞「しばしば」の「繰り返し」のニュアンスと、文全体の主たる述語の両方を満たすのは、ウ「なる」だけ。
なぜこの問題が正答率20.5%の最難問になったのか
この問題は「副詞という品詞を知っているか」を問うているのではない。
問われているのは、
① 長い文の中から主語と述語の骨組みを取り出せるか
② 修飾語の意味と、述語の意味が自然につながるかを確認できるか
という、「文章の構造を見抜く力」。
多くの中学生が、「しばしば」のすぐ近くにある「なく」「ない」に飛びついてしまったと思われる。「近くにある語」ではなく、「文全体の主たる述語」を見る──この一手を身につければ、こうした係り受け問題に強くなる。
その考え方が古文や英語の素養にもなる。
かなり重要な観点である。
①まず文全体の「主語」と「述語」を取り出す。
長い文ほど、骨組み(主語+述語)だけにすると、修飾語の係り先が見えてくる。
②副詞は、主に「用言(動詞・形容詞・形容動詞)」を修飾する。
係り先の候補が複数あるときは、用言かどうかを確認する。
③読点(、)の前後では、係りが切れる可能性が高い。
「しばしば、〜」のように直後に読点がある場合、係る相手は読点より後ろの文末側にあると考える。
「主語+述語」をつかむ → 修飾語との意味のつながりを確認──この二手で、係り受け問題は怖くなくなる。
また、
文の究極的な要約(要点、大事なところ)は、「主語+述語」である。1文で主語と述語を把握できない場合、文と文の関係(接続詞)、段落と段落の関係(見えない接続詞、場面転換)について論理的に考えることが難しくなる。
問3 文章理解 正解「ウ 人によって違う」
空欄①の直前に「それは絶対のものではありません」とあり、画家や音楽家が自分の作品にこだわる方法は絶対的ではないと述べられている。よって、こだわりは、「芸術家それぞれで違う」という内容を言いかえたものが空欄①に入る。
ア 「共通する」が×
イ 「分野ごと」が×
分野ごとのみならず人によって違う。
ウ 正解。→○
エ 「時を経つで」が×
「芸術家それぞれで違う」とは関係のない。
問4 文章理解 正解「イ」
傍線部「仮固定」は、文字どおり「とりあえず(仮に)位置を定めておく」というイメージの言葉。
完全に固めてしまうのではなく、途中でいくらでも動かしたり差し替えたりしてよい状態を指している。
第一段落から第三段落までの流れを整理すると、傍線部②の直前では、いろいろなアーティストの作品にできるだけ多くふれることが大切だと述べられている。たくさんの作品を見ていく過程で、「最終的に一つに決めきらなくてもいいんだ」「いったんはこれでいい、と置いておけば十分なんだ」と気づける──これが「仮固定」につながる流れである。
そして傍線部②の直後では、「仮固定」が言い換えられている。
どんな作品も「これが絶対の正解」ではなく、あくまで「ひとつのあり方」にすぎない。だから、たとえ目の前の作品が傑作だと感じても、「これに匹敵するもの、これとは別によいものは、ほかにもあるはずだ」と受けとめる──そういう柔らかい感覚を持つことへとつながっていく。
ア 「仮固定」の説明が含まれていない。→×
イ 正解。
正解に見えなかった人は、「暫定的に」の意味を調べると良い。
ウ 「自分の技術を向上」が×。
エ 作品を「批判的に鑑賞」すること、が×
問5 文章理解 正解「ア」
傍線部④のすぐ前に「それゆえに」という接続詞が置かれている。「それゆえに」は「だから」「そのため」と言いかえられる順接の言葉なので、傍線部の理由は、その直前の段落で述べられている内容にあるとわかる。
その直前の段落で筆者は、人間について「可能性の溢れ」を生きている存在だと説明している。これは、人間はどんな方向にでも進む余地を持ち、どんな選択もしうる、という意味。
ただし、その「何でもありうる」性質は、見方を変えると「望ましくない方向(=悪)にも進みうる」ということでもある。野放しのままでは、人間は規範からはみ出して悪い方へ転がってしまう可能性がある。
そこで、現実の社会では「これは善」「これは悪」というラインを引き、悪い方向への動きを抑えるためのしくみが必要になる。それが、傍線部にいう「制限や禁止」の正体である。
ア 本文では、人間はどんな選択もしうる「可能性の溢れ」の中を生きており、そのままでは道徳的に望ましくない行為(=悪)へも進みうると説明されている。それゆえ、社会は善悪のラインを引き、悪い方向への動きを抑える「制限や禁止」を設ける──というのが傍線部の趣旨。アの「際限のない選択肢」は「可能性の溢れ」の言いかえ、「非道徳的」は「悪」の言いかえとして、本文の論理を正しくなぞっている。→○
イ 傍線部が問うているのは「現実の社会」での話だが、選択肢の中身が「芸術の世界」の話にすり替わっている。論じる場面そのものが本文とずれているのでアウト。加えて、「芸術は人間に善行を促すものとはならない」といった主張も本文中には見当たらない。→×
ウ 「芸術」と「現実の社会」をはっきり別ものとして区別しており、芸術が現実の社会に「揺らぎ」を生じさせるという展開にはなっていない。→×
エ 傍線部の「制限や禁止」が設けられる本当の理由は、人間が規範からはみ出して悪へ走る可能性を抑えるためであり、「他者との協調」のために設定するわけではない。また、「社会問題を巻き起こす」といった内容も本文には書かれていない。→×
問6 文章理解 a「宙づり」 b「エ」
a
傍線部⑤の「この二つ」は、傍線部⑤よりも前の段落で説明された人間が持つ二つの傾向を指している。
① 動物としての傾向
他の動物と同じように、ゴールに向かって最短距離で進もうとする性質。
② 人間ならではの傾向
他の動物にはない、ゴールへ急がず、あえて寄り道や引き延ばしを楽しむ性質。
この二つの方向性は反対向きのはたらきをしており、片方が引っぱれば、もう片方が引き返す──筆者はそれを「綱引き」に見立てて表現している。要するに、対抗しあっているということ。
空欄に入るのは、①(動物的傾向)と反対の、②(人間特有の傾向)を表す言葉。しかも問題文に「比喩的に」とあるので、人間特有の傾向を何か別のものにたとえて表した言葉を、本文の中から探すことになる。
本文をたどると、「それに対して」で始まる段落に、「宙づり状態」という表現が出てくる。これはまさに、「ゴールに着地せず、空中でとどまっている」という比喩で、人間特有の「あえて目的に到達しない」傾向を表している。
よって、空欄aに入るのは「宙づり」。
b 正解「エ」
問6aで考えた「宙づり」の状態について、本文ではさらに重要な指摘がされている。
「宙づり」の中にいる人間は、ゴールに到達できないもどかしさ・落ち着かなさを感じる一方で、その「決まりきっていない感じ」をどこか面白いとも感じている──というのだ。
傍線部⑤のあとを読むと、「人間らしさ」を表すこの傾向は、不安や不快がともなうのに、それでもなぜか心ひかれる、という説明がされている。
整理すると、「宙づり」を味わうときの人間の状態には、
■ マイナス側の感覚:不安・不快
■ プラス側の感覚:楽しさ・面白さ
という反対方向の感覚が、同時に発生している。
選択肢の中で、この「マイナスとプラスが同居している状態」をもっともぴたりと言い表しているのは、エ「不快と快を同時に味わう」。
よって正解はエ。
問7 文章理解 正解「ウ」
傍線部⑥の前にある「それ」が、何を指しているかを正確につかんだ上で、選択肢を判断する問題。
本文をたどると、「遊び」や「ゲーム」について、次のような説明がされている。
- ゴールはあくまで仮に設定されたもの(本物の目的ではない)
- そこにたどり着くまでに、いくつもの段階や障害がしかけられている
- プレイヤーは、そのハラハラ・ドキドキ(サスペンス)そのものを楽しんでいる
- つまりこれは、実際にゴールへ到達するための行動ではなく、あくまで余暇のすごし方
言いかえると、遊び・ゲームとは、現実そっくりの状況を仮に作りあげ(=シミュレーション)、その中で「目的達成のドキドキ」を擬似的に味わう営み──と整理できる。
この理解をもとに、各選択肢を吟味していこう。
ア 「現実の社会問題を解決する」が、遊びやゲームの説明としてズレている。本文では、遊び・ゲームの目的はあくまで仮に設定されたものであって、現実の課題を解決するためのものではない。また、本文はサスペンス(ハラハラ)そのものを楽しむとあるので、「不安を取り除く」も逆方向の説明になっている。→×
イ 「現実の社会における目的達成の場面以上」の障害を遊び・ゲームで設けるという内容は、本文には書かれていない。本文が言っているのはあくまで「ハードルを設けてサスペンスを楽しむ」ということで、現実より大変な障害を作るとは限らない。→×
ウ 「擬似」とは、本物に似ているが本物ではない別のものという意味。「架空の目標の達成」「適度な不安」「擬似的に体験する」といった表現が、本文の「仮の目的」「サスペンス(適度なハラハラ)」「シミュレーション」と過不足なく対応しており、遊び・ゲームの説明として正しい。→○
エ 「不快を覚えずに困難を克服する」が、本文と真逆。遊び・ゲームでは、サスペンス(=不安・ハラハラといった不快を含む感覚)こそが楽しみの中心になる。不快をゼロにして攻略するものではない。→×
問8 文章理解 正解「イ」
この問題は、文章全体を見渡して「人間と芸術はどう関わっているか」を読み取って答える、いわゆる全体把握問題。
こうした問題では、選択肢が本文の内容と「8割合っているけれど、最後の一点だけ違う」といった紛らわしい作り方になっていることが多い。
本文と食い違う部分が一カ所でもあれば、その選択肢はアウト──
という意識で、一つひとつ細かく照合していこう。
ア 「芸術的な感覚に優れた人間」が、「現実の社会問題」に対して「解決方法を提示できる」──という展開は、本文には書かれていない。本文ではあくまで、芸術と現実社会は別ものとして区別されている。芸術を通じて多様性を学べるとは語られているが、「具体的に社会問題を解決する」というところまでは踏みこんでいない。→×
イ 本文の流れを順に追うと、
- いろいろな作品にふれる
(=芸術に親しむ) - そこから、「これだけが正解ではない」という多様性・相対性の感覚が育つ
(=さまざまな視点を獲得) - それが、「自分の人生にもいろんな道があっていい」という肯定的な構えへつながる
(=柔軟に自身の生き方を選択することができる)
──と、本文の内容とすべての要素がきちんと対応している。よって本文と一致。→○
ウ 本文では、人間は社会の中で「絶対的なものではないけれど、倫理や正義といった規範を身につける」と述べられている。しかし、芸術表現にはその倫理や正義の枠からはみ出すものもあると説明されている。
つまり、人間は倫理や正義に従って芸術を選び取っているわけではない。むしろ芸術は、ときに倫理や正義の外側にも踏み込む。よって、選択肢のような「倫理や正義に沿って芸術を選んでいる」という説明は本文と合わない。→×
エ 「目的達成(へ向かう傾向)」と「不安混じりの楽しみ(享楽)」という二つの要素がある、という前半部分の整理は本文に合う。
ただし、本文では芸術は後者(不安混じりの楽しみ)に近い側と位置づけられており、芸術がこの二つを「調和」させたり「維持」させたりするとは書かれていない。「二つの要素を芸術がまとめあげる」というような主張は、本文の論旨を超えてしまっている。→×
まとめ
2025年(令和7年度)兵庫県公立高校入試の国語は、形式は例年通りで、極端な難問はなく平均点も驚くほど高かった。進学校を目指す中学生は、90点前後を確実にとっておきたい年度。
・大問1 問三b(グラフ読み取り):47.2%
・大問3 問四(古文の心情理解):43.4%
・大問4 問二(表現技法):42.7%
・大問5 問二(係り受けの文法):20.5%
このあたりで点差がついたと思われる。
特に大問5の問二は正答率20.5%。
「副詞は何を修飾するのか」という基本ルールを長い文の中で適用できたかどうかが分かれ目。「しばしば」が副詞であることを暗記しておく必要はない。文法の演習が不足している中学生が多い。入試の配点も高くはないため軽視されがちだ。高校古文に影響が必ず出てしまうため、高校生になるまでには中学国文法のマスターを勧めたい。
選択肢問題は、「正解の根拠」と同じくらい「不正解の根拠」を意識すること。本文中の根拠を一語一語丁寧に照合する習慣をつければ、得点は着実に伸びていく。








