「荘園」とは?中学生にもわかる仕組みと、赤穂のまわりにあった荘園|Willbe図書館 追加図書(伊藤俊一『荘園』)

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今日もブログを読んでくださって、ありがとうございます。
進学個別指導塾Willbeの光庵(こうあん)です。

今月も、兵庫県赤穂市の個別指導塾がお届けする
圧倒的不人気シリーズ「Willbe図書館の追加図書」。笑

今回は『荘園―墾田永年私財法から応仁の乱まで』(伊藤俊一、中公新書、2021年)です。

今回も、完全に私の趣味です。

「荘園を理解せずに日本史を語るな」

高校の日本史の先生たちのあいだには、
「荘園を理解もしていないのに、日本史を語るな」
という言葉があるそうです。

日本史を趣味として、ちょろちょろ勉強している私。
この言葉を聞いてから、中学生に社会を教えることに、ちょっとだけ後ろめたさがあります。笑

たしかに荘園って、わかりにくいんです。

「律令・公地公民」→「荘園」→「戦国時代」

この流れが、どうもすっきりつながらない。

戦国時代マニアを名乗っておきながら、
中世の日本のダイナミックな動きを語る資格がない気がしていました。

そんなとき、赤穂の赤穂書房に立ち寄って、たまたま目に留まったのがこの一冊です。

どんな本?

出版社の紹介文は、こちらです。

荘園は日本の原風景である。公家や寺社、武家など支配層の私有農園をいい、奈良時代に始まる。平安後期から増大し、院政を行う上皇の権力の源となった。鎌倉時代以降、武士勢力に侵食されながらも存続し、応仁の乱後に終焉を迎えた。私利私欲で土地を囲い込み、国の秩序を乱したと見られがちな荘園だが、農業生産力向上や貨幣流通の進展に寄与した面は見逃せない。新知見もふまえ、中世社会の根幹だった荘園制の実像に迫る。

https://www.amazon.co.jp/

正直、苦しみました

私、平安時代まわりの情勢に弱いんです。

以前紹介した『秦河勝』を読むのにも苦労しましたが、
『荘園』はそれ以上に私を苦しめました。

6時間ほどかけて半分ぐらい読んだところで、心が折れそうに。
本気で読もうと「トキシラズ」に行ったにもかかわらず、です。笑

そもそも荘園ってなに?中学生向けにひとことで

むずかしく考えず、まずはこれだけ。

荘園=「国のものだったはずの田んぼが、だれかの私有地になったもの」

流れで見ると、こうなります。

  • 飛鳥〜奈良時代:土地も人も、ぜんぶ国のもの(公地公民)。田んぼは国が貸し出し、税をとる
  • 743年:墾田永年私財法。「自分で新しく開いた田んぼは、ずっと自分のものにしていいよ」
  • 平安時代:貴族や大きなお寺・神社が、どんどん田んぼを開いたり集めたりする=荘園が増える
  • 平安時代の後半:地方の有力者が、自分の土地を都の貴族やお寺に「寄進」(プレゼント)する
  • 院政のころ:上皇のもとに、ものすごい数の荘園が集まる
  • 鎌倉〜室町時代:武士(地頭など)が、荘園にどんどん食いこんでいく
  • 戦国時代:戦国大名が土地を直接おさえ、荘園はほぼ消える(豊臣秀吉の太閤検地で、とどめ)

「不輸」と「不入」ってなに?

荘園の話でかならず出てくる、この二つの言葉。

  • 不輸(ふゆ)の権=税を納めなくてよい権利
  • 不入(ふにゅう)の権=国司(国の役人)の使いが、田んぼの調査に入ってくるのを断れる権利

この二つを手に入れると、その土地は「国の手が届かない場所」になります。
だから、みんな欲しがったんですね。

2025年の私の疑問に、今の私が答えてみる

じつはこの記事、最初に書いたのは2025年のはじめでした。
そのとき、私はこんな疑問を書いています。

「なぜ朝廷は、土地や税のことを決める力を、国司にまかせていったのか?」
「国司に訴えて特別あつかいしてもらう……これって、賄賂の匂いがしませんか?」

読んで理解したつもりでブログを書こうとしたのに、
文章にしてみると、理解していないことがわかる。
あのときの私は、そう書いて筆を止めていました。

あらためて整理すると、こういうことのようです。

国司にまかせるしかなかった朝廷

奈良時代の税は、戸籍にのっている「人」に対してかけるものでした。
ところが、人が逃げたり、戸籍をごまかしたりして、この仕組みがうまく回らなくなっていきます。
天然痘の大流行などで、人も田んぼも荒れてしまった時期もありました。

そこで平安時代の朝廷は、発想を切りかえます。

「決まった量の税をきちんと都に送ってくれれば、あとの国の治め方は国司にまかせる」

これが「国司に権限がうつっていった」理由です。
朝廷が直接、全国の田んぼを見て回る力は、もう残っていなかったんですね。

賄賂……というより「強い人の名前を借りる」

国司に大きな力がうつると、今度は地方の有力者たちが困ります。
国司の取り立てが厳しければ、せっかく開いた田んぼから、たくさん税をとられてしまう。

そこで考え出されたのが、「寄進」です。

自分の土地を、都の有力な貴族や大きなお寺に「寄進」して、名目上の持ち主になってもらう。
そのかわり、自分はその土地の管理人として、実際の支配を続ける。

国司だって、都の有力貴族や大寺院の名前が出てくれば、手を出しにくい。
こうして「不輸・不入」の荘園が広がっていきました。

賄賂というより、「強い人の名前を借りて、国司から土地を守る」仕組み。
2025年の私に教えてあげたいです。笑

赤穂のまわりにも荘園があった

ここからは、赤穂の塾ならではの話を。
荘園は、教科書の中だけの話ではありません。
私たちの住む赤穂のまわりにも、ちゃんとありました。

周世郷は、京都のお寺の領地だった

赤穂市の周世(すせ)。
鎌倉時代の周世郷は、京都・大原の法華堂の領地でした。
山あいの赤穂の村が、はるか京都のお寺の荘園として、お米を送っていたんです。

周世については、別の記事でマニアックに掘り下げています。
▶ 周世(すせ)の神護寺と「周世郷」の秘密【赤穂マニアック地域史①】

相生の「矢野荘」と、秦氏の子孫

となりの相生市には、「矢野荘(やののしょう)」という荘園がありました。

地元の研究会「秦氏を学ぶ会」の会誌『秦氏を学ぶ』第3号によると、
1075年、秦為辰(はたのためとき)という人物が、開発が難しくて残っていた矢野の荒れ地に用水路を引き、5000人を集めて大工事をおこないました。

ところが、開発した土地は藤原氏の有力者に寄進され、やがて皇室の荘園になっていきます。
さっきの「寄進」の仕組みそのものですね。

そして鎌倉時代、為辰の子孫を名のる寺田法念(てらだ ほうねん)は、この荘園をめぐって京都の東寺と何度も争いました。
東寺の側から見れば「悪党」。
でも見方を変えれば、自分たちの祖先が切り開いた土地を取りもどそうとした人、とも言えます。

矢野荘のようすは、東寺に残された古文書『東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)』にくわしく記録されています。
この文書は国宝で、ユネスコの「世界の記憶」にも登録されています。

秦氏については、こちらのシリーズで書いています。
▶ 坂越・大避神社を楽しむ周辺知識シリーズ(大避神社完全ガイド)

私の感想:誰に勧めるか?

正直に言います。
誰にも勧めません。笑

それでも、
「空前絶後の、ワンチャン読んでくれる高校生がいるかもしれない!」
と期待して、ひっそりWillbe図書館に忍ばせておきます。

もし
「荘園を理解していないのに、日本史を理解したつもりになるなよ?」
というパワーワードに心がザワついた方がいれば、ぜひ。笑

戦国大名につながる話

「戦国大名」という言葉が正しいのかどうかはわかりませんが、
戦国大名が生まれた背景や、なぜ下剋上が起きたのかを理解するためにも、荘園の理解は欠かせません。

戦国大名になりかけた地方の領主たちが、
家臣団をまとめあげ、近代的な組織に変えていくのが、どれほど大変だったか。
この本を読んで、それが少し明るく見えてきた気がします。

毛利元就は、なぜすごかったのか?
そして、毛利元就の「闇」とは何だったのか?
そんなことも考えたくなる一冊でした。

用語にもう少し慣れる必要がありそうです。
私にとって、まだまだ読みごたえのある本だということがわかりました。

保護者の方へ

中学の歴史では、荘園は「墾田永年私財法」「荘園」「不輸・不入の権」と、用語を覚えるだけで終わりがちです。
でも「なぜそうなったのか」がわかると、平安時代から戦国時代までが一本の線でつながります。
お子さんと「うちの近くにも荘園があったんだって」と話してみてください。

生徒のみなさんへ

「墾田永年私財法」「不輸の権」「不入の権」。
テストのために覚える言葉だと思っていませんか?

どれも、
「税をとりたい国」と「自分の土地を守りたい人たち」の、
何百年にもわたる知恵くらべの記録です。

その舞台は、赤穂のすぐとなりにもありました。
用語の向こうにいる人たちの顔を想像すると、歴史はぐっとおもしろくなります。

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この記事を書いた人
光庵良仁

個別指導塾Willbe塾長(代表)
光庵 良仁
(コウアン ナガヒト)

●1983年6月17日生
●赤穂市出身
●赤穂高校卒
●立命館アジア太平洋大学卒

2019年3月兵庫県赤穂市に「個別指導塾Willbe」を開校。Willbe理念は「赤穂市に最高の大学受験環境を」。
教室には図鑑・マンガ・小説・新書あわせて1000冊以上の本棚(Willbe図書館)を設置し、蔵書の選定を自ら行っている。

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