「途中式を書きなさい!」には、脳科学的な理由があった

数学。中学生/高校受験

皆さん、こんにちは。

突然ですが、お子さんやご自身に こんな経験はありませんか?

「途中式なんて書かなくても解けるし」

「いちいち書くのめんどくさい」

「暗算でやった方が速い」

…からの?

答え合わせをすると ケアレスミスだらけ

実はこれ、 「性格がズボラだから」でも 「集中力がないから」でもありません。

脳科学的に、ちゃんと理由があるんです。

今回は、 「途中式を書く」という行為が いかに脳をラクにしているかを 塾長が紐解いていきます。


ワーキングメモリーって何?

こういう話をすると、

勉強が苦手なお子様のお話

って感じがしますが、

何もそういうわけではありません。

一見、勉強が得意そうにみえるお子様のお話でもあります。

「脳の作業机」の話

まず、聞き慣れない言葉から。

コンピューターの発達で、人間の脳みそもコンピューター用語で例えられている時代です。

嫌な時代です笑

一般的な言葉でワーキングメモリーを説明します。

RAMがワーキングメモリー。

ワーキングメモリとは、 情報を一時的に頭の中で保持しながら、 同時にそれを処理する能力のことです。よく「脳のメモ帳」や「作業机」に例えられます。

机が広い人は、 一度にたくさんの資料を並べて作業できる。

机が狭い人は、 すぐにモノが溢れて、 さっき置いた書類がどこに行ったか分からなくなる。

ここで大事なのは、

人間のワーキングメモリの容量は、
驚くほど小さい

ということ。

一般的に、 同時に処理できるのは4〜7個程度と 言われています。


暗算で解こうとすると、脳内で何が起きているか

たとえば、こんな計算を 途中式なしで暗算してみてください。

3x+5=2(x4)+113x + 5 = 2(x – 4) + 11

頭の中だけで解こうとすると、 脳内の作業机は一気に大混雑します。

(個人差がありますよ?)

① 右辺のカッコを外して 2x82x – 8 をキープ

② それに +11+11を足して 2x+32x + 3をキープ

③ 左辺と右辺の xxを移項して 3x2x3x – 2x

④ さっきの「+3+3+3」と、移項した「5-5−5」を…

「あれ、さっきの数字なんだっけ?」

…はい、ここで詰みます。

「覚えておくこと」と「計算すること」を 同時にやろうとすると、 脳の作業机は一瞬でパンクする。

これが、 符号ミスや単純な計算ミスを生む 最大の原因です。

計算すること。
これがCPU。


途中式を書く=「脳のメモリを外に逃がす」

ここで、途中式を1行ずつ書くと どうなるでしょうか。

書いた瞬間に、 それまで必死に頭の中でキープしていた情報を 紙に預ける(保存する)ことができます。

💡 イメージするなら スマホでアプリをこまめに閉じて

メモリを解放する「キャッシュクリア」と同じ。

パソコンでタブをたくさん開いてるとPCの速度が遅くなるのと同じで、そういう時はタブを閉じておくのも同じ。

すると、脳はどうなるか。

「今、目の前の1行を計算すること」だけに 100%集中できる状態になります。

これが途中式の本当の正体です。


途中式がもたらす、3つのメリット

① 脳を「処理」だけに使える

紙に書いた情報は、 もう覚えておく必要がありません。

脳は計算だけに全力投球できます。

② 自分のミスに気づきやすくなる

思考のプロセスが目に見える形になるので、

「あ、ここで符号間違えた」

と客観的に気づけます。

これをメタ認知と言います。

③ ミスからの復帰が早い

答えが間違っていても、 紙の上の「履歴」を遡るだけで どこでつまずいたかが一目瞭然

暗算だと、消えた記憶を追いかけることになり 最初からやり直しです。


なぜ子どもは「書くのがめんどくさい」と言うのか

ここで一つ、疑問が出てきます。

途中式を書いた方が脳はラクなのに、 なぜみんな書きたがらないのか?

答えは、

「文字を書く」という行為自体が、 ワーキングメモリを少し消費するから

です。

書き慣れていない子にとっては、 書くこと自体が「面倒で疲れる作業」に感じられる。

でも、ここがポイント。

書くことに慣れてくると(自動化されると)、 書くことへのメモリ消費はゼロに近づき、

「書いた方が圧倒的にラクで速い」

という逆転現象が起きます。

数学が得意な子は、 全員この段階に到達しています。

そして、

処理速度があがり、暗算で出来ることが増えて、ますます計算の精度が上がる。


📝 塾長メモ

塾で生徒を見ていて 本当によく感じることがあります。

数学が得意な子は、決して 「ワーキングメモリが無限にある天才」ではない

ということ。

むしろ逆で、

自分のメモリの限界をよく知っているからこそ、 積極的に紙に書き写して 脳の負担を減らしている

んです。

「数学ができる人=脳の使い方がケチな人」

これ、わりと真実だと思います。


まとめ

途中式は「最強の補助思考ツール」

途中式は、 「先生に提出するための義務」ではありません。

狭いワーキングメモリをやりくりして、 脳をラクに動かすための補助ツール

それが途中式の正体です。

「書くのめんどくさい」と言う前に、

「暗算の方がよっぽど脳が疲れる」

ということを、 ぜひお子さんに教えてあげてください。

ミスが減って、解くのも速くなって、 何より勉強がラクになります。

良いことしかありません。


と。

ここまでは、大人の理性と経験から分かるわけです。

しかし、しかし、ですよ。

塾の現場で何年も向き合ってきた 残酷なパラドックスをお伝えしなければなりません。


途中式の矛盾

途中式が苦手な子は、そもそもワーキングメモリーが低い😢


途中式を書くことは、

脳のメモリを節約する最強の方法

です。

ところが、です。

「書きなさい!」と言われても、
本当に書けない子がいる

という事実です。

サボっているわけでも、 反抗しているわけでもありません。

脳の仕組みとして、書けないんです。

途中式が苦手な子は、そもそもワーキングメモリーが低い😢

今回は、その理由と、 ではどう支援すればいいのかを 塾長が解説していきます。


① 脳の作業机が、すでに満席という悲劇

前回お話しした「脳の作業机(ワーキングメモリ)」。

実はこの机のサイズは、人によって違います。

生まれつき、あるいは発達の段階で、

「机が人より少し狭い」子

がいるんです。

そういう子が複雑な計算問題に出会うと、 脳内ではこんなことが起きています。

① 問題文を読んで意味を理解する  
→ メモリ消費 30%

② 「どうやって解くんだっけ?」と公式を思い出す  
→ メモリ消費 40%

③ 目の前の最初の数字を計算する  
→ メモリ消費 30%

合計、100%

…はい、もう満席です。

スマホとPCなら、画面が動きません。

大人は言います。

「だから紙に書いてメモリを解放しなさい」

でも、子どもの側からすると、

「紙に書く」という動作を処理するメモリが、 もう残っていない

んです。


② 途中式を書くことは「高度なマルチタスク」

「文字を書くなんて、無意識でやれるでしょ」

そう思いますよね。

でも実は、文字を書くという行為は、 脳にとってかなり重い処理なんです。

書くという動作を分解してみると…

【運動処理】
手をどう動かすか、指に指示を出す

【空間認識】
ノートのマス目や行の正しい位置に配置する

【記号化処理】
頭の中の数字を「文字」という記号に変換する

ワーキングメモリが狭い子にとって、

「計算をしながら、 同時にそのプロセスを文字にして書き写す」

という行為は、

スマホで、最新の重い3Dゲームを 2つ同時に起動するようなもの

なんです。

結果、どうなるか。

文字を書こうとした瞬間に、

頭の中で必死にキープしていた計算が フリーズして、消える。

「書くと、分からなくなる」

「だから書きたくない」

「暗算でやらせて」

これは、わがままでも怠けでもありません。

「書くことにメモリを割くと、 計算の糸口が消えてしまう」

という、脳の悲鳴なんです。


③ 放置すると始まる、恐ろしい「負のスパイラル」

このパラドックスを放っておくと、 こんなループに入ります。

ワーキングメモリが狭い

  ⬇︎

「書く」というマルチタスクで脳がパンクする

  ⬇︎

途中式を書かずに、無理やり暗算で解こうとする

  ⬇︎

当然、途中で数字を忘れてミスを連発する

  ⬇︎

「自分は算数・数学ができない」と自信を失う

…胸が痛くなるループです。

ここで「書きなさい!」と叱るだけの指導は、

机が狭くて困っている子に 「もっとたくさん書類を広げなさい!」 と怒鳴っているようなもの

なんです。

根本的な解決には、まったくなりません。


ではどうするか? パラドックスを突破する3つの支援

この残酷なジレンマを解消するには、

「書くことの心理的・認知的ハードルを 徹底的に下げてあげる」

ことが必要です。

① 「書く」という動作を自動化させる

数字やひらがなを丁寧に書くことに メモリを使っている段階では、 途中式まで手が回りません。

殴り書きでもいいから、

「無意識に数字が書ける」レベル

になるまで、 書く動作に慣れ親しむ必要があります。

漢字練習や視写などが、 意外と数学にも効くのはこのためです。

② 「式の形」をあらかじめ印刷しておく

ゼロから式を書かせるのではなく、x+=\square x + \square = \square□x+□=□

のように、 枠だけが用意されたプリントを使います。

書くべき「形」が決まっているので、 文字配置や空間認識に使うメモリを 最小限に抑えられます。

塾長おすすめの方法です。

しかし、いつまでたっても☝これ☝では、いけません。

③ ステップを細分化する

「式を全部書きなさい」は、酷です。

そうではなく、

「まずはカッコを外したところだけ 書いてごらん」

と、1段階ずつ進めていきます。

スモールステップで、 脳のメモリの避難訓練をするイメージです。


📝 塾長メモ

「途中式を書かない子」を見たとき、 私たちは反射的にこう判断してしまいます。

「やる気がない」

「サボっている」

「言うことを聞かない」

でも、その子の脳内では、

ワーキングメモリという心の余裕が ギリギリすぎて、 書くという高度な技にまで手が回らない

という、 孤独な戦いが起きているのかもしれません。

塾でも家庭でも、

「書きなさい!」と叱る前に、

「書ける状態を整えてあげる」

ことから始めてみてください。

それだけで、 お子さんの数学が徐々に徐々に進歩していきます。


まとめ:

私は妥協する気がない。

書けない子には、

書ける訓練をちょっとずつちょっとずつやっていってあげます。

だが、

そもそもワーキングメモリーが低い子に対して、

一時の感情で妥協する気はありません。

確かに、低い。

進歩は1ミリ程度。

でも、妥協すれば1ミリもメモリーは上がらない。

進歩は1ミリ程度。

だから、見た目の点数も上がらない。

でも、妥協すれば1ミリもメモリーは増えない。



だから、

私は、正解不正解などどうでも良いと思っているのです。

だから、

私は、中学生がテストの結果を持ってきても、何も言わないのです。

(嬉しそうなら、一緒に喜ぼうとは思います。)



書こうとする姿勢については、一切の妥協をしません。

どれぐらい??

これぐらい。

本当に付き合うべきことは??

付き合うべきは、

「途中式を書きたくない」という感情

ではなく

「かけない」という不安に寄り添うこと。

一緒に、ちょっとずつやるしかないじゃないか。

だから、

一緒に、やっていくしかないじゃないか。

だから、

Willbeの授業時間は長いのです。

人間の能力が、短期間で劇的に変わったらビックリします。

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