さて、
今回の音読は島崎藤村。島崎藤村といえば「破戒」が有名ですが、今回は「千曲川旅情の歌」です。
もともとは「詩」だけだったのですが、この詩に曲をつけた歌曲(「千曲川旅情の歌」「小諸なる旅情のほとり」)も有名なんだそうです。
せっかくなので、記事の後半にいくつかYoutubeのリンクを貼っておきました。
「こ~~もろ~~~なる~~~~♪」
歌を聴き過ぎて歌のテンションで音読為ないようにご注意下さい。
千曲川旅情の歌【意訳】
意訳 1番
小諸城址のほとりで白い雲を眺め悲しくたたずむ旅人がいる。新緑の繁縷(はこべ)もまだ芽吹いておらず、若草もその上に腰を下ろせるほどではない。
真っ白な雪が敷き積もる山辺で、薄く積もった雪が陽に溶けて流れている。
日は暖かくなってきたが、野に満ちる香りはない。春霞が浅くかかるのみで、麦の色はわずかに青い。
幾人かの旅人の群れがあぜ道を急ぎ通っていく、日が暮れて浅間山も見えなくなり、
佐久地方の草笛の音が哀しく聞こえる。千曲川に漂う波の岸に近い宿屋に入り、濁り酒を飲みしばらくの間 旅愁を慰める。
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遊子;ふるさとを離れて旅をする人、旅人。
繁縷;はこべ
衾(ふすま);襖(ふすま)とは違う。現代の布団とは違うが布団を意味する。詩の中では、雪が薄く降り積もっていることを表現。
意訳 2番
昨日もこのように何ごともなく過ぎてしまった。
そして今日もまたおなじように過ぎてゆくことであろう。
どうしてこの命をあくせくして生き、明日のことばかり思い煩うのであろうか。
何度も繰り返されてきた栄枯盛衰の歴史のよすを残す千曲川の谷に下りて、河波のだだようさまを見れば、砂まじりの水が激しく巻き戻されている。
この小諸城は何を語り、この岸の河波は何を答えようとしているのか。
過去の時代を静かにふり返れば、百年という歳月もまるで昨日のように思える。
千曲川の岸辺の柳も霞んで、春先の水が流れている。
ただ一人岩をめぐりて、この千曲川の岸辺に旅愁をつなぎ止めようとしている。
小諸城 千曲川周辺地図
「千曲川」というのは、日本1長い信濃川のことで、信濃川の長野県内流域を「千曲川」というそうです。
小諸といえば、千石久秀、真田幸村、真田昌幸など有名戦国武将にゆかりがある地域です。武田信玄・上杉謙信のかの有名な「川中島の戦い」も小諸周辺ですね。
詩に歌われた小諸城址は、跡地の一隅が懐古園として整備され歌碑が建立されているとのこと。信州を旅するあかつきには、訪れてみたい場所ですね笑
島崎藤村は、1899年頃に小諸にある塾で英語と国語をおしえており、6年ほど小諸に住んでいたそうです。