皆さん、こんにちは。
今回は、
須恵器と並んで秦氏が
日本に革命を起こしたもう一つの技術、
「製鉄(せいてつ)」についてお話しします。
映画『もののけ姫』で、
エボシ御前が率いる「タタラ場」の熱気を
覚えていますか?
あの巨大な炎と、鉄を生み出す情熱……
実は、
その技術の「種」を日本に蒔いたのが秦氏なのです。
「桃太郎(吉備津彦命)」
が鬼を退治できたのも、
聖徳太子や秦河勝が国を造れたのも、
すべてはこの「鉄」の力が背景にありました。
日本の形を変えた「火」と「鉄」
鉄は「富」と「武力」の源
当時の日本にとって、
鉄は今の「石油」や「半導体」のような
戦略物資でした。
農業の効率アップ:
木のクワやスキでは
耕せなかった固い地面も、
鉄の刃先があれば
サクサク耕せます。
これで収穫量が
数倍に跳ね上がりました。
圧倒的な武力
銅の剣よりも遥かに鋭く、
折れにくい鉄剣や鉄の矢尻。
映画でサンの刃を跳ね返した
エボシの刀のように、
鉄を持つ軍勢には
誰も太刀打ちできませんでした。
秦氏の「たたら製鉄」が山を変えた
秦氏がもたらした技術の真髄は、
砂鉄から鉄を取り出す「たたら製鉄」です。
巨大な「ふいご」
風を送り込み、火力を最大にする装置。
『もののけ姫』で
女性たちが足で踏んでいた
あの巨大なポンプです。
これによって、
日本国内で高品質な鉄を
自給自足できるようになりました。
1200℃の限界突破
須恵器を焼く1100℃の技術をさらに進化させ、
鉄を溶かすための超高温を実現しました。
吉備・播磨が「鉄の王国」だった理由
吉備(岡山)から
播磨(兵庫・坂越周辺)に
かけてのエリアは、
鉄作りに必要な条件が
完璧に揃っていました。
- 良質な砂鉄:
川から流れてくる砂鉄が豊富だった。 - 豊かな森林:
超高温を維持するための「炭」になる木がたくさんあった。 - 秦氏のネットワーク:
技術者集団である秦氏がこのエリアを拠点にした。
吉備津彦命が倒したとされる
鬼「温羅(うら)」の正体も、
(シリーズ0参照)
実はこうした
エボシ御前のような、
鉄の技術を持つ渡来人集団
の記憶ではないかと言われています。
聖徳太子と「鉄」の外交
聖徳太子が秦河勝を重用したのも、
秦河勝が
この「鉄の供給網」を握っていたからです。
新しい都を造るにも、
広隆寺のような大寺院を建てるにも、
巨大な木を切るための
「鉄の斧やノミ」が大量に必要です。
秦河勝は、
自らの一族が持つ吉備・播磨の製鉄拠点を
動かし、
太子のプロジェクトを
物資面で全面的にバックアップしました。
現代に息づく「吉備の鉄」のバトン
秦氏や温羅(うら)たちが築き上げた
「鉄の王国・吉備」の情熱は、
1600年の時を超え、
巨大な産業へと姿を
変えて生き続けています。
究極の「鉄」の芸術、「日本刀(備前長船)」
吉備の鉄の凄さを証明するのが、
瀬戸内市にある
「備前長船(びぜんおさふね)」です。
鎌倉時代から江戸時代にかけて、
日本刀の最大の生産地であったこの地では、
秦氏たちが持ち込んだ
「たたら製鉄」の技術が、
最も純粋な形で
磨き上げられました。
現在でも、
長船の刀匠(とうしょう)たちは、
砂鉄から生まれる純度の高い鉄
(玉鋼:たまはがね)
を使い、
世界一美しいと言われる日本刀
を作り続けています。
最高の材料(千種鉄と吉井川)
吉備の奥地
(現在の兵庫県宍粟市や岡山県北部)で
採れる砂鉄は
「千種鉄(ちくさあき)」
と呼ばれ、
日本一の品質を誇りました。
これが吉井川という大きな川を使って、
河口にある長船に大量に集まったのです。
余談「もののけの森」と「鉄の民」
鉄を作るには、
膨大な木々を炭にする必要がありました。
『もののけ姫』で描かれた
「森の神々」と「開発する人間」の衝突は、
この播磨や吉備の山々でも
実際に起きていたことかもしれません。
エボシは渡来人?
宮崎駿監督の裏設定によると、
エボシ御前は
厳密には渡来人(外国人)ではないけれど、
海外の高度な技術を
日本に持ち帰った逆輸入のリーダーという、
非常に秦氏に近い立ち位置の人です。
公式なインタビューなどで語られている
エボシの過去は、壮絶です。
- 海外への身売り:
若い頃、
海外(中国など)
に売られてしまう。 - 海賊の妻:
倭寇(わこう)
という海賊の親分の妻になり、
そこで大陸の最新知識や武術を
身につける。 - 下克上:
最終的にその親分を殺し、
お宝と
最新兵器(石火矢=鉄砲)の技術を
奪って日本へ帰還した。
つまり、彼女は「日本生まれ」ですが、
その中身(技術と思想)は
完全に「渡来系」のようです。
エボシ御前は、
海の向こうから最新の「石火矢」を持ち帰り、
古い慣習に縛られない自由な村を築きました。
その600年以上前、
同じように海の向こうから
最新の「製鉄(たたら)」を持ち込み、
日本の農業や軍事を一変させたのが秦氏です。
日本の歴史において、
外からの風(技術)を吹き込み、
時代をアップデートさせてきたのは、
いつだって彼女たちのような
「越境するリーダー」だったのかもしれません。
物部氏と蘇我氏
(秦河勝の運命を変えた「中央政界の権力闘争」|坂越・大避神社を楽しむ周辺知識シリーズ①)
で紹介した
「物部氏」と「蘇我氏」の対立は、
誰かに怒られそうな気は致しますが、
実は『もののけ姫』の物語構造
とソックリなんです。
蘇我氏は「エボシ御前」である(新文明の推進)
蘇我馬子率いる蘇我氏は、
まさにエボシ御前のタタラ場のような存在です。
最新技術と仏教
渡来人(秦氏ら)のバックアップを受け、
最新の製鉄・土木、
そして「仏教」という外来の思想を
取り入れました。
合理主義
「古い神様(自然)よりも、新しい仏様と技術の方が国を豊かにする」
という考え方。
これは森を切り拓くエボシの合理性と
重なります。
物部氏は「森の神々とアシタカ」である(伝統の守護)
対する物部守屋(もののべのもりや)は、
日本古来の神々を祀る軍事一族です。
八百万の神を守る
物部氏は
「異国の神(仏)などを入れたら、日本の神々が怒って疫病が流行る!」
と主張しました。
自然への畏怖
古くからの伝統や自然の秩序を
守ろうとする姿は、
シシ神の森を守ろうとする山犬や、
古い掟を重んじる
アシタカの故郷の価値観に近いです。
「シシ神の首」を落とすような大事件
587年、両者はついに激突します。
これが「丁未の乱」です。
この戦いで、
蘇我氏(+聖徳太子・秦河勝)が勝利し、
物部氏が滅びたことで、
日本の景色は一変しました。
巨大寺院の出現
森が切り拓かれ、
秦氏の技術で巨大な木造建築(寺)
が次々と建ちました。
神話の時代の終わり
自然そのものを神とする時代から、
人間が技術と教義(仏教)で
国を治める「文明の時代」へ。
まさに、
映画のラストでシシ神が消え、
新しい緑が芽吹いた後の世界
のような変化です。
どちらが「正義」だったのか?
『もののけ姫』がそうであるように、
この戦いも単純な「勧善懲悪」ではありません。
物部氏(アシタカ側)が
守ろうとした「自然への敬意」がなければ、
日本人は自分たちのルーツを
失っていたかもしれません。
蘇我氏(エボシ側)の「改革」がなければ、
日本は東アジアの中で
取り残されていたでしょう。
まとめ
やたら吉備国を登場させるのは、
私が赤穂の人だから
ですね笑
赤穂の皆様、
ここまでのシリーズを読んでいただいて、
備前長船、
岡山県総社市
へ
行ってみたくなりませんか?
え?
(ならない?)
これで坂越に鉄が採れる鉱山があれば
完璧なのですが、
残念ながらありません。
ただ、
金山はあったので、
ご紹介しておきます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigenchishitsu1951/32/175/32_175_361/_article/-char/ja/
坂越・大避神社を楽しむ 周辺知識シリーズ
地元赤穂大好き
(うそ、そこそこ好き)
の私としては、
赤穂の歴史にも
皆様に興味を持ってほしいと思うのですが、
秦野河勝といったキーワードを
深堀しようとすると
日本書紀だったり
荘園の扱いだったり
かなりマニアックな知識が必要で、
とっつきにくいのです。
もし、
中学生や高校生が赤穂について調べようと思っても
なかなか深堀出来ない領域です。
私が学んだことを、
出来うる限り高校日本史レベルに落とし込み
お話ししていこうと思います。
ゆるゆると♪












